中国人民解放軍は6日、海軍の戦略原子力潜水艦が太平洋の公海上に向け、訓練用模擬弾頭を搭載した潜水艦発射型戦略ミサイル(SLBM)の発射に成功し、予定された海域に着弾したと発表した。台湾有事が懸念されている中で、中国側が事前に発射計画を通告し、成果を公表した狙いはいったい何なのか――。

 中国軍は、試射について関係国に事前通告しており、「国際法と国際慣行に合致している」と主張した。木原稔官房長官は同日の記者会見で、中国側からの事前通告を受け「わが方から中国の軍事活動が活発化していることへの深刻な懸念を伝達しました」と述べた。また、日本の領域や排他的経済水域(EEZ)の上空を通過したことは確認されておらず、航空機や船舶への被害情報もないと説明した。

 中国軍は、試射したミサイルの型式を明らかにしていないが、中国共産党系メディア「環球時報」は専門家の見解として、「巨浪3(JL―3)」である可能性が極めて高く、射程は1万キロメートルを超えるとしている。巨浪3は、昨年の「抗日戦争勝利80周年記念軍事パレード」で初めて一般公開された。

 今回の試射は、黄海で中露合同軍事演習「海上連合2026」がスタートした日であり、オーストラリアとフィジーが「海洋平和同盟」を締結した日でもある。

 中国事情通は「世界に中露連携を誇示しつつ、巨浪3の実戦的能力を見せつけることで、中国が太平洋において戦略核戦力を含む軍事プレゼンスを強化するという表明になります。中国が太平洋で弾道ミサイルの発射実験を行うのは異例ですが、日本、オーストラリア、ニュージーランドが即座に懸念を示したこと自体が、中国としては狙い通りの効果を生んだということでしょう」と指摘する。

 また、台湾有事が懸念される中、射程1万キロ超とされる弾道ミサイルを試射したことには、さらなる意味がありそうだ。

「巨浪3は中国近海から米本土を射程に収めることができるとみられています。つまり、台湾有事で米軍が介入した場合、その背後にある米本土まで核抑止力が及ぶことを示したことになります」と同事情通は語る。

 中国軍機関紙「解放軍報」は以前の記事で、SLBMについて「潜水艦から搭載・発射される弾道ミサイルで、通常は核弾頭を搭載する」と説明。潜水艦から発射されるため秘匿性が高く、破壊力も極めて大きいことから、第二撃能力を担う主力兵器と位置づけている。第二撃能力とは、敵国から核攻撃を受けた後でも、自国が核兵器によって反撃できる能力を意味する。

 今回の弾道ミサイル試射には、米国へのけん制という意味もありそうだ。