金満補強の象徴が、また皮肉な敗戦を刻んだ。メッツは7日(日本時間8日)、敵地クアーズ・フィールドでロッキーズに2―6で逆転負け。ナ・リーグ東地区最下位の14勝23敗となり、首位ブレーブスとは絶望的な11・5ゲーム差に広がった。

 痛恨の場面は2―2の8回裏だった。かつて球界屈指の守護神として鳴らしたクレイグ・キンブレル投手(37)が同点のマウンドへ送られたが、先頭から2連打と四球で無死満塁。迎えたマッカーシーに右翼ポール際へ勝ち越しの2号満塁本塁打を浴びた。判定はビデオ確認でも覆らず、3連勝中で勢いを取り戻したかに見えたメッツのスイープ狙いは一瞬で吹き飛んだ。

 米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」の電子版「ON SI」は、この背信投球を受け「メッツはクレイグ・キンブレルとの契約を解除すべきか」と踏み込んだ。今季は9試合中6試合で無失点ながら、崩れる時は止まらない。この日で防御率は3・68から7・56へ急落。複数の救援投手を使えず、先発マウンドに立ったクリスチャン・スコット投手(26)にも球数制限があったとはいえ、勝負どころを任せるにはあまりに危うい内容だった。解雇論は感情論ではなく、現場の切迫感そのものでもある。

 キンブレルは通算440セーブを誇り、現役ではケンリー・ジャンセン投手(38=タイガース)に次ぐ大物。2011年にはブレーブスでナ・リーグ新人王に輝き、同年から14年までの4年間で185セーブ、防御率1・51を刻んだ。だが、今のメッツで映る姿は、殿堂入り候補の威光ではなく、年俸250万ドル(約3億6000万円)に見合わぬ「老いた高級保険」(ON SI)である。
 
 大富豪スティーブ・コーエン・オーナー(69)を頂点とする体制のメッツは、その潤沢な資金力を武器に補強を重ねてきた。キンブレルもぜいたく税の加算を含めれば実質525万ドル(8億2000万円)規模の負担とされる。だが、金を積んでも、8回の火消しは買えなかった。

 若手投手に枠を譲るべきだとの声が出るのも、自然な流れだろう。名クローザーの凋落とチームの迷走は、金満補強の限界を同時にさらしている。