投打がかみ合わず近年は低迷の色が濃いエンゼルスにあって、ただ一人だけ別格の光を放っている。MLBワーストの11季連続ポストシーズン逸、2015年以降は勝率5割超えなしという重たい現実を背負うカート・スズキ監督(42)率いるチームだが、マイク・トラウト外野手(34)のバットだけは、かつての黄金期を思わせる熱を帯びてきた。

 地元のアナハイム、ひいてはロサンゼルスでも「またあのトラウトが戻ってきた」と受け止められつつあり、この勢いが続けば、沈みがちなクラブを一人で引っ張り上げかねない空気すら漂う。象徴的だったのが15日(日本時間16日)のヤンキース戦だ。ヤンキー・スタジアムで行われた一戦は、エンゼルスが4―5でサヨナラ負けを喫し再び借金生活へ逆戻り。だが、主役はトラウトだった。3点を追う5回、オホッピーの1号ソロで1点差に詰め寄ると一死一塁からトラウトがヒル投手(27)から右中間へ勝ち越し6号2ランをたたき込み、一気に試合をひっくり返した。それでも最後は逃げ切れず逆転サヨナラ負けとなったもののトラウトの一発が放った衝撃は、敗戦の後味を上回るほど濃かった。

 インパクトを残しているのは、トラウトの驚異的な量産ぶりだ。これで敵地のヤンキー・スタジアムで3日連続本塁打。同球場でビジター選手が3日連続でアーチを架けたのは、2013年のミゲル・カブレラ(引退=当時タイガース)以来。しかも、この直近3試合で4本塁打。ヤンキースとの1シリーズ4発は歴代でも上に3人しかいない水準で、ヤンキー・スタジアム通算打率も.344。米スポーツ専門局「ESPN」など主要メディアによれば、現存するア・リーグ球場ではトラウトにとって自己最高だという。

 ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(33)が同シリーズ3本目となる今季7号を放った舞台で、それ以上にトラウトは敵地を〝ホーム同然〟にしているようにも見える。ニューヨークの大舞台で記録を塗り替えるたび、再評価のボルテージは自然と上がっていく。

 もともと今季序盤のトラウトには、MLB公式サイトでも「MVP級」との見方が出ていた。健康を取り戻し、再び外野守備にも就き、打撃メカニクスの修正が数字に表れ始めていたからだ。15日(同16日)終了時点で今季成績は67打数16安打、打率2割3分9厘、6本塁打、15打点、OPS.945。打率はまだ低空飛行ながらも本塁打はア・リーグ3位タイ、打点は同6位タイ、OPSは同8位で3部門で十傑に入っている。

 開幕直後の好スタートが偶然ではなかったことを、このヤンキース4連戦で証明した形だろう。エンゼルスはまだ借金1で、すぐに優勝争いを語れる立場ではない。だが、健康なトラウトが毎晩のように試合の景色を変えるなら話は別だ。かつてのMVPが本来の姿を取り戻しつつある。いや全盛期をもう一度なぞるのではなく、そこを超えるのではないか――。そんな期待が地元のロサンゼルス周辺で膨らむのも、不思議ではない。