崖から落ちた神童がはい上がった。ボクシングWBCバンタム級挑戦者決定戦(11日、両国国技館)で同級2位・那須川天心(27=帝拳)が同級1位フアンフランシスコ・エストラダ(35=メキシコ)を9ラウンド(R)終了TKOで勝利。昨年11月に現WBC同級王者・井上拓真(大橋)に敗れてからの再起に成功し、5月2日に予定される拓真―井岡一翔(志成)戦の勝者への挑戦権を手にした。
会心の復活劇だ。「自ら「崖っぷち」と呼ぶ状況で、2階級制覇のレジェンドを退けた那須川は思わず涙。リング上のインタビューでは「泣いてないですよ」と笑顔を浮かべ「勝つってこんなにうれしいんですね」と安堵した。
前戦ではもろさを露呈した接近戦でも、ひるまず前進。「苦手なことを取り組んできました。本気でやったら半年足らずでこんなに人間って変われる姿を、完璧に見せることはできていないですけど、片鱗は見せられたと思う」と充実感をにじませ「リベンジの切符をつかんだので、必ずリベンジして、応援してよかったと思える選手になります」とファンに誓った。
戦いは開始から俊敏な動きから鋭い右ジャブを突き刺し、自分の距離を保って優位に展開。この試合からキックボクサー時代にボクシングを学んでいたグローブスジムの葛西裕一会長との師弟関係を復活させ、磨きをかけたという左ボディーが威力を発揮。1Rに左ボディー、4Rに左ストレート、7Rにも左ボディーでぐらつかせ、9R終了後、エストラダが脇腹の痛みのため棄権を申し出た。
前戦でも序盤は好調だったが、4R終了後の公開採点で3者ともドローとなったことで、流れが変わった苦い記憶がある。今回も2者がドローを付け「嫌なトラウマを思い返しそうになった」と苦笑しながらも「前回の経験があったから、今回こうやって乗り越えられた」と成長を実感していた。
敗れても引退は「何も考えていなかった」という。それでも「崖から落とされた。メンタルも体もボロボロ」という状態からはい上がり「これはきっかけにすぎない。まだまだ高い崖を登っていきたい」と、さらなる成長に意欲を示した。
拓真―井岡戦に関しては「ひたすら拓真選手が勝つことを願って、毎日、照る照る坊主を作って祈りたい」とリベンジ戦実現を熱望する。今度こそ世界の頂へ登ることはできるか。












