イランの最高指導者を選出する88人の「専門家会議」は9日、米イスラエル軍の攻撃で死亡したアリ・ハメネイ師の後継者に次男モジタバ・ハメネイ師(56)を選出したと発表した。体制転換を目指すトランプ大統領に徹底抗戦の意志を示したのと同時に莫大なオイルマネーを巡る軍側の思惑もあった。

 モジタバ師は1979年のイラン革命を率いたホメイニ師、89年に就任しイランを37年間統治したハメネイ師の後を継ぎ、第3代最高指導者として、反米強硬路線をさらに推し進めるとみられる。

 イランのイスラム革命防衛隊は9日、モジタバ師が最高指導者に就任したことを受け、イスラエル・テルアビブに向けて新世代のミサイルを発射したと発表した。

 ハメネイ師は生前、秘密裏に後継者候補3人を指名していたが、その中にモジタバ師の名はなかったという。イラン政権は長らく世襲制を批判してきたからだ。

 イラン事情通は「モジタバ師は中堅聖職者ですし、政権内で正式な役職に就いたことはないようですが、革命防衛隊と密接な関係があり、その強力な圧力から選出されました。ハメネイ師が殺害されたため、その息子は米イスラエルへの抵抗の象徴で、イランは最後まで戦い続けるというメッセージになります」と語る。

 実際、トランプ大統領は米FOXニュースに「気に入らない」と不満を口にした。イスラエル・カッツ国防相もXに「イランのテロ政権によって任命されたすべての指導者は、明白に排除の対象となるだろう」と投稿した。

 中東の衛星テレビ・アルジャジーラなどによると、モジタバ師は高校卒業後、神学校に進学。保守派宗教指導者のもとで宗教教育を受け、伝統的な神学校の課程でイスラム法学や宗教学を学び、神学校で教える身となった。

 また、若いころは、イラン・イラク戦争に参加。その後、革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」や、同防衛隊と連携する民兵組織「バシジ」と緊密に協力し、ハメネイ師の独裁体制を支える「非公式の権力者」として、国内統制や反体制運動の抑圧に関与してきた可能性が指摘されている。

 一方、イラン事情通は「革命防衛隊は、単なる軍隊ではなく、石油利権などを持つ巨大な経済帝国でもあります。モジタバ師が最高指導者になれば、革命防衛隊の利権が守られるという意図もあり、最高指導者に推したのでしょう。実際、モジタバ師は、中国とインドに売った石油絡みの富を蓄財し、イランで最も裕福な一人と言われています」と指摘する。

 そんなモジタバ師について、英メディア・BBCのペルシャ語版は、イラン国民に取材し、「体制内部から変化が起きるわずかな可能性さえ完全に消えた」「彼は復讐心の強い人物だ。父親を殺されたのだから復讐をあきらめない。もしアメリカに復讐できなければ、私たち普通の人々に復讐するだろう」などの声を伝えている。