2月28日、アメリカとイスラエルがイランを先制攻撃した。

 こういう事態が生じると、日本政府は情報が遅いとか、十分な情報を取れていないという批判がマスメディアで起きるが、それは日本のインテリジェンスの実態を知らない記者や中途半端な専門家が行っていることだ。日本のインテリジェンス、とりわけ内閣情報調査室の情報入手は早く、分析も的確だ。

 そして原和也内閣情報官が適時に情報を高市早苗首相に入れている。また高市氏の対応も迅速かつ的確だ。

<米軍とイスラエル軍がイランへの軍事攻撃に踏み切ったことを受け、高市早苗首相は28日、自身のX(ツイッター)に「一報を受け、直ちに私から関係省庁に対し、情報収集を徹底すること、残っておられる邦人の安全確保に向け万全の措置を講じることを指示しました」と投稿した>(2月28日「毎日新聞」電子版)。

 インテリジェンス・サイクルが的確に機能している。今回のイラン危機に対する日本政府の対応は、少なくとも初動に関しては満点だ。インテリジェンス機関の再編に関しても、現在の内閣情報調査室を発展し、国家情報局とすることが適切であることがイラン危機でも証明されたと思う。

 事態は流動的だが、こういうときは大きな流れを掴むことが重要だ。まず、本件に関し、国際法違反であるか否かというような議論には意味がない。国際法は生き物だ。アメリカとイスラエルが、イランの体制転覆を目的とした軍事行動という現実が「新しい国際法」を形成しつつあると筆者は見ている。

 筆者が注目しているのは、今回の攻撃で「軍事大国イラン」という神話が崩壊したことだ。

 28日、イスラエルのネタニヤフ首相とトランプ米大統領は、イランの最高指導者ハメネイ師が今回の攻撃で死亡したという見方を示した。翌1日、イラン政府もハメネイ師死亡が事実と認めた。少なくともしばらくの間は、イランに司令塔が存在しない状態になる。

 そうなると外交交渉での取り引きが難しくなる。さらにイランの革命防衛隊や軍も、統一的な方針をもたずにイスラエルや中東に所在する米軍基地を攻撃する可能性がでてくる。事態が複雑化し、予測が難しくなった。

 小さな出来事が引き金となって中東全域への紛争拡大、場合によってはコーカサス地域、ヨーロッパに影響が拡大する可能性がある。日本にもその影響が確実に及ぶ。