トランプ米大統領および政権幹部がデンマーク自治領グリーンランド併合への関心を再燃させている。ホワイトハウスのレビット報道官も6日の声明で「米軍の活用は常に選択肢の一つだ」と言及。ベネズエラに続く軍事作戦となるのか。その領土的野心の背景と影響を追跡すると――。

 トランプ氏は第1次政権時から「米国はグリーンランドの所有権と管理権が必要だと考えている」などとして、安全保障上の観点などから繰り返し、カナダ北東にあるグリーンランドをデンマークから購入する案に言及してきた。

デンマーク自治領グリーンランド(ロイター)
デンマーク自治領グリーンランド(ロイター)

 また、トランプ氏は、NATO(北大西洋条約機構)に加盟している米国やデンマークなどか国の国家安全保障上の観点からも、米軍がきっちり管理すべきだとしている。

 同島は米国の弾道ミサイル防衛システムにとって重要な拠点となっており、すでに大規模な米軍基地が存在している。

 米国事情通は「トランプ氏がグリーンランドを欲しているのは、温暖化で北極圏の氷が解け、中国とロシアの軍艦や潜水艦がグリーンランド周辺の脅威になるというのが建前です。しかし、第2次世界大戦以降、米軍がすでに事実上軍事支配しているので、中国はそこで運用はせず、ロシアも近海を通過することがあるぐらいでしょう。それに米国は、デンマークとグリーンランドとの既存の基地協定だけで、軍の拡大や基地の増加もOKとなっています。本来、わざわざ領有しなくてもいいのです」と語る。

 トランプ氏の建前の裏には、必ずカネや石油などの資源が目的としてある。

「レアアース、レアメタル、ウラン、石油、そして温暖化で入手が可能になった天然ガスがあります。しかし、地元住民は資源開発してきませんでした。グリーンランド自治政府にとって独立への課題は経済的自立で、過酷な植民地支配をしてきたデンマークに経済依存したままでは独立できない。なので中国の資源開発を歓迎し、中国人が大量移住する状況で独立しようとしています。それがトランプ氏の警戒心を強めているのです」(同)

 領有する手法は主に3つ。購入が最有力とされる。次にパラオ、マーシャル諸島などと結んでいる「自由連合協定(COFA)」の締結だ。これは独立国であり続けながら、防衛と一部機能を米国に委ねる特別な国家関係となる。そのためには、グリーンランドがデンマークから独立することが必要となる。

 3つ目はこれまで〝あり得ない〟とされてきた軍事侵攻などによる併合だ。NATO加盟国の米国が欧州に軍事侵攻するなどあり得なかったはずだ。しかし、ベネズエラの大統領を指名手配し、米国で刑事裁判を受けさせるために急襲し、拘束するという奇想天外な手で、一瞬でベネズエラを手中にした。

 米国事情通は「欧州のシンクタンクは、米軍がグリーンランドを軍事侵攻すれば24時間以内に制圧できるとみています。NATOは、加盟国が攻撃されたらNATO全体の攻撃とみなし、全加盟国が防衛義務を負うことになっています。そのNATOは長年、米国の軍事力に極度に依存してきました。どこの国の軍も常に米軍と共に行動することを前提に軍事力を保っています。そのため、米軍が〝NATOの国家安全保障上〟の名目でグリーンランドを制圧しても、NATO諸国は立ち向かわないでしょう」と指摘する。

 ルビオ国務長官は6日、トランプ氏の前のめりについて「差し迫った軍事侵攻の示唆ではなく、デンマークから購入することが目的だ」と〝意訳〟したが…。今後、NATOは〝トランプリスク〟に悩まされることになりそうだ。