ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した米国のトランプ大統領が言いたい放題だ。トランプ氏はコロンビアやキューバに言及し、次はどこが狙われるのかと世界を騒がせている。一方、マドゥロ氏がトランプ氏の虎の尾を踏み、竜の逆鱗に触れたのは、ジョン・レノンの「イマジン」と平和のダンス動画だったという説が浮上している。

 主権国家の大統領を他国の特殊部隊が一瞬で連れ去るという前代未聞の出来事に世界中が脅威を感じる中、トランプ氏は絶好調。「コロンビアも非常に病んでいる。コカインを製造して米国に売るのが好きな病的な男が統治している。そして、彼はそう長くは続かないだろう」「キューバの収入はすべてベネズエラの石油から得ていた。だが、今は何も得られていない。キューバは文字通り陥落寸前だ」「安全保障の観点からグリーンランドが必要だ」など言いたい放題。

 さらに、大統領不在となったベネズエラでは、副大統領のデルシー・ロドリゲス氏が次期大統領となる可能性が高いが、トランプ氏は4日、「自身の改革構想に従わなければ、捕らえられたニコラス・マドゥロ大統領よりも悪い運命をたどる可能性が高い」とクギを刺した。

 拘束の発端となったのは、ここ数週間、マドゥロ氏がトランプ氏を〝挑発〟していたからだという。米紙ニューヨーク・タイムズは4日、「マドゥロ氏のダンスが一因」と報じた。

 これまでトランプ氏はベネズエラ近海に大規模な艦隊を集結させ、複数回の電話会談でマドゥロ氏に「退陣しなければ結果を覚悟しろ」と伝えていた。

 そんな中、マドゥロ氏は11月に公的な集会でジョン・レノンの「イマジン」を歌い踊った。「ジョン・レノンが言っていたように、平和のためにすべてを尽くそう、そうだろ?」とマドゥロ氏は群衆に語りかけながら言った。

 さらに国際女性リーダーシップ学校の開校式典で、マドゥロ氏は自身の演説「戦争反対、平和を」のエレクトロニック・リミックスに合わせて踊ったという。これらの動画はSNSで拡散した。

 内部関係者がニューヨーク・タイムズ紙に語ったところによると、このマドゥロ氏の「能天気」な振る舞いは、マドゥロ氏が「トランプ政権は本気ではない」と考えてのことで、艦隊集結などを〝ハッタリ〟とみなす行為だったという。しかし、それが結果的にトランプ氏の堪忍袋の緒が切れる決定的な引き金となったようだ。

 マドゥロ氏の〝能天気〟さは続いてる。移送中、カメラに気づいたマドゥロ氏は、指で「われわれは打ち勝つ」という意味のVサインをした。それがメッセージと解釈され、エルネスト・ビジェガス文化大臣はインスタグラムでこの画像を共有し、「投獄されたベネズエラ大統領の身ぶりに込められた象徴の力」と記した。また、マドゥロ氏が拘束後に発した最初の公の発言は「あけましておめでとう」という明るいものだった。

 ベネズエラメディア「ウルティマス・ノティシアス」は4日、「VサインはSNSで急速に世界中に広まり、あらゆる地域の社会運動によって広められ、新たな反帝国主義のシンボルとなる可能性がある。米国がマドゥロ大統領を捕らえることに成功したものの、大統領の尊厳と指導力の決意を剥奪することはできなかったということだ」と報じている。

麻薬取締局のヘリから降ろされ連行されるマドゥロ大統領(ロイター)
麻薬取締局のヘリから降ろされ連行されるマドゥロ大統領(ロイター)