米軍が3日未明、ベネズエラの首都カラカスを急襲し、マドゥロ大統領とフローレス夫人を拘束し、米国に移送した。米国司法省は2020年にマドゥロ氏を麻薬密売などの共謀容疑で指名手配している。米国で刑事裁判を受けさせるためという名目で、特殊部隊デルタフォースを派遣して拘束した。この強硬手段に各国から懸念や批判の声が上がっているが、意外な反応を示しているのがロシアだ。

 マドゥロ氏は5日にもニューヨーク連邦裁判所で裁判にかけられる。ベネズエラは大統領不在となったが、トランプ大統領は「適切な政権移行が行われるまで米国がベネズエラを運営していく」と述べている。

 トランプ氏はかねて「フェンタニルなどの麻薬がベネズエラを経由して、米国に密輸されている」と主張。マドゥロ氏が麻薬カルテル「トレン・デ・アラグア」を支援し、国家ぐるみで麻薬密売を行っているとして、「外国テロ組織の指導者」に指定した。これが表向きでの拘束の大きな理由だ。

 他にも拘束した理由はさまざまある。まず、トランプ政権は、ベネズエラ、キューバ、ニカラグアを〝社会主義枢軸〟の主要国とみなしている。

 米国事情通は「トランプ氏はモンロー主義の信奉者です。モンロー主義とは、1823年にモンロー大統領が初めて宣言した、米国大陸で何が起こるかはヨーロッパなどの大国ではなく米国が決定する権利であるというものです。そのためトランプ氏は、マドゥロ氏という反米・社会主義者を排除することは米国の権利だと考えています」と語る。

 次に、ベネズエラは世界最大の石油埋蔵量を持つ産油国という点だ。

「1976年に、ベネズエラは国内にあった米国石油会社を押収し、石油産業を国有化し、トランプ氏はこれを『窃盗』と呼び『石油を取り戻す』と言っています。ベネズエラは石油収入を米国への圧力として利用し、歴代米国大統領をいら立たせてきました。しかも、ベネズエラは、キューバや中国への主要石油供給国となっています。トランプ氏の大きな狙いは石油です」(同)

 さらに、マドゥロ独裁政権下での経済崩壊と抑圧により、この10年で800万人のベネズエラ人が国外脱出を余儀なくされた。移民問題は米国の悩みのタネだった。

 これらを解決するための一石二鳥どころではない解決策が拘束だったわけだが、主権国家の大統領を他国の軍隊が拘束するという前代未聞の事態に、ベネズエラ近隣国やベネズエラと親しいロシアや中国は米国を非難している。

 ロシア事情通は「ロシアとベネズエラは長年の協力関係にあります。しかし、ロシアは今回の電撃的拘束を非難するだけでなく、教訓としています。なぜベネズエラの多層防空システムが機能せず、全く抵抗がないままにマドゥロ独裁政権が倒れたかといえば、民衆の反乱でも、米国のミサイル攻撃でもなく、マドゥロ氏の側近たちが裏切ったわけです。CIAが長年かけて静かに行ってきた諜報活動が実ったことが大きいのでしょう」と指摘する。

 ロシアの親プーチンメディアは「さあ、キエフ(ウクライナ語では、キーウ)とオデッサ(同、オデーサ)を奪取しよう。トランプが〝どうやるべきか〟を説明したからだ。ここまでの傲慢さは、これまで見たことがない!」という見出しで、今回の拘束を詳報し、礼賛といえるような記事を出しているほどだ。

「トランプ氏が『石油を取り戻す』と言っているのも、プーチン大統領がウクライナをロシア帝国の一部とみなして再統合しようとしてウクライナに侵攻していることと重なるようです。ロシアの政治評論家たちは『トランプのレトリックは魅力的だ』『トランプの行動は、モスクワに今後の対応について教訓を与えている』とベタボメしています」とロシア事情通は話している。