【殉教者に捧ぐ/スティール・パルス】

 1970年代後半から80年代前半まで英国で吹き荒れたブリティッシュ・レゲエを代表するバンドのセカンドアルバムにして最高傑作である。ジャマイカ移民2世によって75年に結成され、その後に訪れたパンクロックの影響を受け、冷淡かつ激しい音で多くの後続バンドに影響を与えた。

 レゲエといえば現在では涼しく心地よい音楽として認識されているが、スティール・パルスは反レイシズムを掲げ、政権批判、人種差別批判、貧困問題などについて過激なメッセージを歌い続けた。

 特筆すべきはその独特のサウンドで、バンド名通りに鋼のように固く、冷たく、聴く者の胸に突き刺さった。アルバムの冒頭を飾る「悪の鎖」から「殉教者に捧ぐ」までたたみかけるようなA面はまさに圧巻。「バビロンの掟」「サウンド・システム」などは名曲中の名曲だ。レゲエ特有の音のすき間や空間を感じさせずに、当時交流があったザ・クラッシュやストラングラーズのようなパンクバンドのような攻撃性に満ちている。78年のファースト「平等の権利」も大傑作で全英9位を記録した。

 この時代には同アルバムの他にもマトゥンビ「七つの封印」、UB40「サイニング・オフ」など硬質なブリティッシュ・レゲエの傑作が多く生まれている。

 バンドはその後も傑作を多く生んだが「殉教者に捧ぐ」は当時のロックファンにも多大な衝撃を与えた。涼しいレゲエではない。背筋が凍るような音は、他に類を見ない衝撃性を持っていた。名盤中の名盤である。