〝カネもうけ〟もいいじゃないか――。ボクシングWBA世界スーパーフライ級タイトルマッチが11日に東京・大田区総合体育館で行われ、同級6位・井岡一翔(36=志成)は王者フェルナンド・マルティネス(33=アルゼンチン)に3―0の判定で敗れた。昨年7月以来の再戦で連敗した井岡に対し、日本ボクシング界きっての論客で公式YouTubeチャンネル「前向き教室」も好評の元日本スーパーライト級王者・細川バレンタイン氏(44)は、あの選手とのビッグマッチを提案した。

 前回は王者のパワフルかつ豊富な手数に押され判定負けした井岡は、今回も手数に苦しみながら後半から反撃。10ラウンド(R)には左フックでダウンを奪うなど見せ場をつくった。

 しかし、惜しくも及ばなかったベテランは「やりきった」と充実感をにじませながら今後について言及。「36(歳)になって引退かな、という気持ちはない」と現役続行を明言した上で「(同級にとどまるかバンタム級転向かは)考えられない」と具体的な計画は白紙を強調した。

 井岡は過去3戦3勝と再戦に強く、修正力が注目された。今回は前戦の1Rにダメージを与えた左ボディーを、被弾しながらも打ち終わりに狙う戦法で善戦。だが、細川氏は「やっぱりマルティネス選手は強かった。井岡選手のスタイルで勝つには、あのダウンを6Rまでに取らないと厳しいと思った。そうなればジャッジの見方も変わっていた」と指摘する。

「前回は圧倒的にやられたけど、今回は勝ちの光明が見えた。両者とも修正、レベルアップして差が縮まったのだから修正力はすごい」と井岡のボクシングIQの高さには舌を巻く。しかし、体力的な面では「ごめんなさい。厳しいと思う。肉体が36歳から伸びた人は見たことがない。(世界スーパーバンタム級4団体統一王者の)井上尚弥(32=大橋)選手もそうなると思う。井岡は体のピークはずっと前に過ぎていると思う」とズバリ。

「ボクシングIQが上がればなんとかなるというものでもない。ボクサーって引退してトレーナーになると、もっとボクシングの頭がよくなる。でも、強くなるかといえば強くはならない」と肉体的な衰えを補うのは難しいとの見解だ。

 日本人初の4階級制覇王者であり、14年以上もトップ戦線で戦ってきた井岡の今後に、細川氏が期待するのは何か。

「ファン目線、わがまま」と前置きしつつ「彼の功績はみんな知っている。引退しても続けても、文句を言う人はいない。勝ち負けはどうでもいいので、拳四朗選手と試合してくれたら面白いと思う。彼の美学に反するかもしれないけど、あれだけの功績を残したら〝カネもうけ〟に走ってもいいと思う」と提案した。

 WBA、WBC世界フライ級統一王者・寺地拳四朗(33=BMB)との一戦は、ファンが期待し、何より拳四朗本人も希望する夢の対決だ。細川氏は「全く勝負論がないわけじゃない。井岡選手はマルティネスには体力とパワーで負けた。下の階級から来る拳四朗選手は、そこまであるとは思わない。面白い勝負になると思う」と予想。

 そして「キンシャサの奇跡みたいなことが起こるかもしれない」。かつて衰えを指摘されていたモハメド・アリ(米国)が、ロープの弾力を利用してダメージを軽減する戦法を用いてヘビー級王者ジョージ・フォアマン(米国)に逆転KO勝ちした伝説の一戦の再現も可能とみる。

 レジェンド井岡からまだまだ目が離せない。

☆ほそかわ・ばれんたいん 1981年4月16日、宮崎県宮崎市出身。ボクシングの第40代日本スーパーライト級王者。14歳からナイジェリアで高等教育を受けたのち、英ケンブリッジ大学医学部合格も経済的な理由で入学を断念。帰国後は大手外資金融会社に勤務しながらプロボクシングで日本王者となり、2021年7月に40歳で引退した。戦績は37戦25勝9敗3分け12KO。現在は不動産賃貸経営事業や宿泊事業、ボクシング解説のほか自身の公式ユーチューブチャンネル「前向きチャンネル」(https://www.youtube.com/channel/UCRKutOrnx5S0tTxUR_wNYqA)で積極的に発信も行っている。身長163センチ。