オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第236回は「ヤマ目」だ。

 ヤマ目は、2009年10月11日に、匿名掲示板「2ちゃんねる」(現在は5ちゃんねるに改名)のオカルト板「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」(通称・洒落怖)というスレッドに投稿された怪談である。

 投稿者の母親の実家はG県の田舎で、お盆の時期に、祖父の家に母と弟の3人で車に乗り帰省。祖父は大歓迎してくれた。1泊して自分の家に帰ろうとしたところ、祖父が「もう1泊して帰らんか、山道は心配じゃ」と言う。しかし、翌日、投稿者や弟が友人と遊ぶ約束があるのを知っていた母親はこれを断った。

 車中の助手席で投稿者は眠たく、ボーと窓の外を眺めていた。運転している母親がたまに声を掛けてくれるのだが、上の空で返答していたところ、道の端に一瞬白いものが見えた。

「今、何かいたよね?」と話すと、母親に「怖いから止めて」と怒られた。

 その直後、投稿者の中に何かが入ってきたと感じたと同時に一瞬、背筋が寒くなった。酒に酔ったような感覚で、まともに口が利けなくなった。

 その時、後ろのシートで気配がした。弟に助けを求めようとしたが、体が動かない。弟が急にうめき始めた。まるで動物の叫び声のような奇声と獣のようなにおい。母親も目がうつろになっている。車を止め、投稿者が母親を外に連れ出し、近所の民家に助けを求めたが「ヤマ目にやられたか」と一言言われたのみであった。

 投稿者の記憶は途切れ、3日後に起きた時は病院だった。母親に「弟は?」と聞いても、母親は「誰? 子供はあなただけでしょ」と答えるのみだったという。

 筆者がこの話を読んで、最初に連想したのは憑き物の一種である「ヤマノケ」だ。山をうろつき回る怪異で、車に乗っている人間に取りつこうとしてくる。また、変なものを見た瞬間に、背筋が寒くなったことから「くねくね」ではないかとも思われる。しかし、「くねくね」を目撃したものは、いずれも精神が破壊されてしまい、無事ではないため、この怪異でもないと思われる。

 果たしてヤマ目とは、何であろうか。