天国の鉄人は、きっと喜んでいるはずだ――。ソフトバンクの絶対的主砲・柳田悠岐外野手(35)が23日、福岡市内で開かれた球団主催の野球教室に参加。「子どもは純粋なところがいい」と無理難題にも〝神対応〟で接し、無垢な質問に快く応じた。ハイライトはサインをせがまれた際、プロのすごみを見せつけるかのようにトップスピードで〝逃走〟する姿だった。「ギータの走り方、かっけぇー」。きれいなフォームで疾走する後ろ姿に、少年たちは目を輝かせていた。
イベント後、柳田は近況を報告。「走ることがすごく大事。年内はトレーニングとランニングだけを、とにかくやります」。35歳を迎えたオフ、意図を持って走りまくる姿が浮かんだ。
「143試合出れば、ある程度の数字は残る」(柳田)。シーズンを戦い抜く基本は今も不変だ。2017年2月。ある伝言が柳田に届いた。発信者は「国民栄誉賞」受賞者にして、広島出身で〝カープ男子〟の柳田にとっては「偉人」の衣笠祥雄氏。同年からヘッドコーチに就任した達川光男氏に託された伝言の中身はこうだった。「ソフトバンクの枠だけに収まらない、日本球界を背負う男。だが、今のままじゃ、ケガをする。それは球界の損失。ゆっくりでもいいから『きれいなフォームで走る』ことを意識してほしい。まずは外野とベンチを往復する時だけでもいい。やり続けなさい」。通算504本塁打を放ち、2215試合連続出場の鉄人は、柳田の才能にほれ込むと未来を案じていてもたってもいられず、かつての戦友の携帯を鳴らしていた。「柳田のことが大好きなんじゃ。必ず伝えてくれ。そして、大事に育ててくれよ」。
柳田はレギュラーを奪取した2014年から今季まで、実に10シーズンで9度「規定打席」をクリア。36歳を迎える来季に向けて走り込む柳田の姿に、天国に旅立った鉄人はどんな言葉をかけているだろうか。
この日、約300人の子どもたちが柳田の疾走する姿に、目を奪われていた。「球界の顔」となった男の影響力は大きい。脇を締めて大きく腕を振り、太ももを力強く高く蹴り上げ、大きなストライドで駆ける〝きれいなフォーム〟をまねる少年少女もきっといるはずだ。柳田が長く第一線で戦場に立ち続ける意義を、鉄人は見抜いていたのかもしれない。










