【森脇浩司 出逢いに感謝(19)】2020年のオフにロッテの井口資仁監督から電話が入り「チームを強くしてくれませんか」とオファーを受けた。球界の後輩で、しかもホークスの教え子からの頼みは重く感じました。

 ホークスのコーチ時代、僕は王貞治監督に「いつもどんな気持ちでやっているんだ」と聞かれたことがありました。「1年勝負と思ってやっていますよ。僕が去ることになっても選手に強くたくましく歩み続けてほしいし、僕の後に来た人があまり困らないようにしたいので、全力で指導することが大事だと思います」と答えました。王さんは「そうか。俺も同じように考えるんだよな」って…。今、感謝されなくてもいつか「あの人のおかげでよくなったな。ためになったな」と思ってもらえたら十分。だから人に厳しくもなれるし、それ以上にやさしさも与えることができる。

 王さんも「俺は年上には強いんだけど、年下には弱いんだよなあ」って。誰しも目上や上司には弱くて部下には厳しい。いい顔をしたいといってもそういう人は多い。井口監督から「やってくれませんか」と言われ、俺もそんなことあるなって思い出しましたよ。「俺でよければやらせてもらうよ」と…。よし、という気持ちは変わらない。一軍野手総合コーチ兼内野守備コーチという肩書だったけど、僕にとってこだわるところではなかったですね。

 若いいい選手はいてもレオネス・マーティン、ブランドン・レアードに依存せざるを得ない印象はありました。彼らに頼ってはいけない。日本人選手の底上げが急務と思ったし、内野は中村奨吾、藤岡裕大、井上晴哉、安田尚憲…。外野は年齢はいってても荻野貴司が存在感を発揮し続けないといけない。そこに打力がしぶとい角中勝也がいて、藤原恭大、和田康士朗も代走に甘んじる選手じゃないと思ったし、茶谷健太にも期待していましたね。競争原理だけじゃなく、そこに協力原理が働かないと強くならないですよね。

 井口監督は選手の時からそうだったけど、落ち着きがある。兄貴的存在とよく言われたのは、若々しくて年齢が近かったということもあるよね。ある意味クール。人情味があって温かいんだけど、落ち着いていてクール。そのギャップが魅力だったんじゃないですかね。僕がいなくても十分できていたくらい知識も豊富だし、守備走塁、マネジメントも非常に勉強している。

 前年度は2位といっても14ゲーム離されての2位ですから、シビアな優勝争いという意味では21年が初めてだったでしょう。着実に井口監督が積み重ねてきたものが近い将来、開花しようとしている。それを確信させる1年だったですね。
 その年は阪神を退団した鳥谷敬がロッテに入団し、注目を集めた。彼の野球に取り組む姿勢はストイックで素晴らしい。でも…。