岸田総理は、10月5日に年収の壁を解消するため「長期的には第3号被保険者の制度を変えていかないといけない。この議論はしっかりやっていく」と発言した。
現在、政府は社会保険料の年収の壁対策として、大企業に勤める人の「年収106万円の壁」に対して、106万円を超えた労働者の手取り収入が減少しないよう新たな手当を導入した企業に補助金を出す。中小企業勤務者の「年収130万円の壁」に対しては、130万円を超えても、連続2年までは配偶者の扶養にとどまれるようにするという対策を打ち出している。複雑な弥縫策だ。
また、仮に社会保険料の106万円の壁や130万円の壁を解消できても、そもそも年収103万円を超えると所得税が課税される「103万円の壁」は解消されない。
岸田総理が新たに打ち出した第3号被保険者制度の廃止は、ひどい対策だ。不平等を拡大するからだ。第3号被保険者制度を廃止すると、専業主婦は年間約20万円の国民年金保険料を支払う必要が出てくる。これが新たな不平等を生むのだ。
例えば、年収600万円の夫と専業主婦の世帯が年間に支払う厚生年金保険料は54万9千円だ。一方、年収400万円の夫と年収200万円の妻の世帯が納める厚生年金保険料も同じ54万9千円になっている。つまり、第3号被保険者制度があるからこそ、世帯年収が同じなら、同じ保険料になっているのだ。第3号被保険者制度をなくしたら、専業主婦世帯だけに過重な負担を課すことになってしまうのだ。
私は、所得税も、社会保険料も2分の2乗方式を採用すべきだと思う。2分の2乗というのは、まず夫婦の収入の平均を計算して、それに基づいて計算した税金や社会保険料をそれぞれ納付する方式だ。この方式の最大のメリットは、夫婦間でどのような労働分担をしても、世帯年収が同じなら、税金や社会保険料の負担が同じになるということだ。その結果、年収の壁はすべてなくなる。実現性は問題ない。所得税の計算では、アメリカやドイツは2分の2乗課税を導入しているし、フランスは一歩進んで、子供の数まで加えたN分のN乗課税を導入しているからだ。
政府が専業主婦の負担増を狙うのは、労働力人口が減少するなかで、専業主婦を無理やりにでも労働市場に引っ張り出して、低賃金労働をさせたいからだろう。ただ、家庭でどのような労働分担をするかは、家族が判断すべきことで、税制はあくまでもライフスタイル選択に中立であるべきだ。












