この左腕が加入しなければ「アレ」は実現していなかった。18年ぶりのリーグ制覇を果たした阪神投手陣の救世主となったのが、大竹耕太郎投手(28)だ。ソフトバンクから「現役ドラフト」で加入した6年目左腕はいきなり2桁勝利をマーク。新天地で一気にブレークした苦労人が歓喜の独占手記を寄せた。

 阪神での1年目からリーグ優勝という機会に恵まれ、うれしく、満たされた気持ちでいます。ソフトバンクでは1年目から優勝を経験しましたが、自分が頑張って優勝できたと実感できるシーズンは一度もありませんでした。昨年「現役ドラフト」で阪神に移籍し、開幕から先発として継続して起用してもらっているからこそ、これまでとは違う感慨に浸れるのだと感じます。

 昨年までのプロ5年間で通算10勝。自分を語る上で「現役ドラフト」は切っても切り離せないと思います。ただ、そのご縁をいただいてタイガースに入団し、これまでを振り返って感じるのは、この制度以上に、その先で出会った「人」に恵まれたことが大きいと感じています。自分がよくなるためのヒントや考え方を多少なりとも吸収できたことが、今シーズンにつながったと思える部分があるためです。

 先発した18試合。やはり7月5日の広島戦でプロ初完封勝利を飾った時の喜びは、今でも自分の脳裏に強く焼きついています。逆にうまくいかなかった試合のことも同じくらい記憶にあります。6月10日、阪神入団後、初めて敗戦投手となったエスコンフィールド北海道での交流戦・日本ハム戦です。帰阪後もなかなか切り替えが難しかったのですが、甲子園での練習中に声をかけてくださったのが西勇さん。その試合は同点の8回に1アウトも取ることができず、決勝打を浴びて降板。それでも西勇さんは「7回3失点ってそんなに悪い結果かな? 8回も託されている。それって信頼されている証しじゃない?」と。主観的な視点だけでなく、第三者的な視点から言われたことで、初めてポジティブなアプローチで敗戦と向き合うことができました。

 昨年、食事をご一緒させていただいたヤクルト・石川さんからも興味深い話を聞かせてもらいました。「試合前のブルペンで調子が悪かったら、今日はラッキーな日だと思って試合で投げる」。そのココロは「調子が悪い時にどう対処していけば、プラスの結果に転じるか。それを試せる日」というものです。昨季までの自分は「今日はダメな日」と思い込むと、成功へ転換させる努力や作業を諦めてしまう傾向がありました。

〝気づき〟があったのは、そういう状況こそ、自分の技術をより磨くことができる特別な日ということです。思い通りにいかない状況ほど小さなプラスを見つけて、それを積み重ねていく。この作業が大事ということを改めて学んだような気がしています。諸先輩方の助言に感謝しつつ、自分を変えるきっかけを作ってくれたこのチームで、さらに必要とされる存在になれるよう、これからもコツコツと自分を積み上げていければいいなと思っています。

(阪神タイガース投手)