元日本代表FW武田修宏氏(56=本紙評論家)が5月のU―20W杯(アルゼンチン)に臨んだ日本の指揮官、冨樫剛一氏(52)と対談。前編ではユース世代の現状とスペイン3部ラヨ・マハダオンダに所属するMF中井卓大(19)について語り合った。
  
 武田 U―20W杯、お疲れ様。予選のU―20アジアカップ(4強)から試合を見せていただきました。いい戦いだった。W杯では決勝トーナメントには行けなかったのは残念だったけど、試合を見ている人と、現場で指揮した人の意見は違うと思って。実際に(開催国)アルゼンチンで何を感じ、何を思っていたのかを聞きに来たんだ。

 冨樫 ありがとうございます。この年代もアジアの戦いは厳しくなっているし、コロナ禍の影響も大きくあって日程も変更になり、時間は少なかった。U―20代表のメンバー招集ではクラブから「プロ(Jリーグの)選手が必要なのか」って話も出て…。そういう状況の中でも、日本はW杯に出られるだけの力を持ってきていると思う。ただ今後、結果を残すなら見直さないといけない部分も多い。そのへんの危機感はありますね。

 武田 ユース世代でも結果でしか判断しない人はいるからな。選手の招集でも、チームづくりの面でも、今まで以上に難しくなっているんだな。

 冨樫 コロナ禍であまり海外遠征にも行けなかったですし、シーズン中に国内で3泊4日のキャンプをしても、ケガの問題であったり、リカバリーだったり、さまざまな事情からメンバー全員がそろって練習できるのはマックス2回だけしかなかったんです。

 武田 自分がユース代表だったころは(千葉)検見川で1週間くらい走りっぱなしだったぞ。

 冨樫 選手たちはGPSを付けていて、練習での走行距離とかメニューも、すぐにわかるので合宿が終わるとクラブから選手のためを思って「強度が高すぎるんじゃないか」って意見をいただく。だから2部練習をやったとしても強度の高い対人ができない。それでリスタートの練習ばっかり。その成果はあったけど難しいんですよ。

 武田 チームマネジメントも大変だな。直接聞くと、苦労がよくわかるよ。ところで(当時)RマドリードBのMF中井選手はW杯メンバーから外れていたけど、どんな事情?

 冨樫 中井はスペイン合宿(昨年11月)で招集して、技術の高さ、ゲームをどうつくっていってフィニッシュまで行くかとか。高いレベルのパフォーマンスを見せてくれた。だけど20分しか続かない…。W杯メンバーは21人しか選べないし、すごく考えた結果、20分だけの選手を連れていくことはできなかったんです。やっぱり90分、今はアディショナルタイムがあるから実質100分続けられる選手をベースにしましたね。

 武田 それで中井選手を使うならどんな起用を考えていた?

 冨樫 8番(攻撃的MF)がベストかなと思っていましたね。人間性もすばらしいし、海外でやっているだけあって、何事にも物おじしないし、スタッフともきさくに話ができる。もっとゲームをしていればって思いますね。試合に出ていればもっとレベルの高い選手になっていた。

 武田 あの年代でも試合に出ていないと伸びないからな。間違いなく才能はあるのに。ちなみに自分は高校(静岡・清水東)卒業して1年目のトップリーグで11得点。そして19歳でA代表にも選ばれていた。

 冨樫 中井も、もうすぐ20歳ですからね。この前、Rマドリード入りした(イングランド代表MFジュード)ベリンガムと同い年。移籍金は150億円だからね。これからの中井には期待しているし、プレーしている彼の姿が見たいかな。まだまだこれからでしょう。