世界を知るランナーの胸中は――。来年1月の第100回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)を巡り、主催する関東学生陸上競技連盟(関東学連)が「関東学生連合」チームを廃止すると発表したことを受け、マラソン男子で元日本代表の川内優輝(36=あいおいニッセイ同和損害保険)が取材に応じた。学習院大時代に連合チーム(当時は関東学連選抜)で2度箱根に出走した経験を踏まえ、関東学連の決定プロセスを疑問視。その上で、連合チームが与える陸上界へのメリットを訴えた。

 関東学連は昨年4月の段階で、出場権を逃した大学から予選会での個人成績が優れた選手を選抜して構成する連合チームを編成しない方針を公表した。一部の学生たちが議論の透明化や再考の場を求めたものの、6月の代表委員総会で承認。関係者によると、直前まで議事内容は伝えられていなかったという。川内は、同様の状態で連合チームの出場が取りやめとなった第90回大会をほうふつとさせたと明かす。

 川内 連合チームの存続を望む大学がある中で、明確な手続きを行わずに廃止してしまうのは、やはり良くないと思う。もちろん個人の立場としては、連合チームが存続してほしいのは間違いないが、関東学連の会議の中でちゃんとした手続きを踏んだ上で議論をして、多数決で廃止になったのであれば、それは時代の流れでもある。でも、しっかりとした手順が踏まれていなかったのが、一番の問題点だと思う。

 第90回大会後には学生たちの努力もあり、第91回大会からオープン参加が認められた。しかし、当時から〝密室体質〟が問題となっており、青学大の原晋監督(56)も2日に自身のSNSで「10年近く正式な場で監督会議を月一開催し、さまざまな課題に対し議論する場が必要と提案しても、いまだ見直しされない」と苦言を呈したほどだ。

 川内 採決は取る時はしっかり取るが、何となく雰囲気で流れてしまったり、今回のように議題を事前に周知しないままだと、委任状を出す形をとった大学は幹部の提案に自然と賛成することになってしまう。もし、ちゃんと議題が明記されていれば、委任状ではなくて、しっかりと自分たちの意見を述べる機会もあったと思う。そういうことが10年ぐらい前にはあったし、今の状況はわからない部分もあるが、東大の学生などが手続きが明確でないと不満を漏らしている時点で、10年前と似ていると思う。

 長きにわたり状況が改善されていないとはいえ、軸がブレてしまっては本末転倒だ。箱根駅伝創設の理念は「世界に通用するランナーの育成」。強豪校出身ではない川内にとって、連合チームとして臨んだ箱根路は貴重な財産となった。

 川内 箱根駅伝の時に学連選抜でプレッシャーを受けていたので、日本代表になった時のプレッシャーも既視感というか、経験をしていた部分があったおかげで、精神的に潰されずに済んだということもあると思う。その後に飛躍する選手のためにも、そういった舞台を経験できるのは、非常に価値があることなのかなと思う。また、いろんな大学の選手から刺激を受けて交流が深まっただけでなく、実際に卒業してからも学連選抜のチームの仲間と一緒に合同練習をしたり、切磋琢磨しながら一緒に頑張り合えた。

 自分たちの利益を取るのか、陸上界の未来を取るのか。お互いが納得する道筋をつくるためにも、関東学連はもう一度現場の声に耳を傾ける必要がありそうだ。