奈良公園のシカに「想像の100倍はマダニくっついてる」とのツイートがバズったことで、シカを介したマダニ由来の危険な感染症が注目を集めている。最近は室内飼いされていないネコを介しても同じ危険性が高まっているという。

 マダニは森や草地にある木や草の葉の裏に潜んでおり、動物が近づくと二酸化炭素を感知して飛びついて吸血する。基本的に山林に生息するシカなどの哺乳類が代表的な宿主だ。マダニは野生動物によって運ばれるためこれまで人里には少なかったが、近年は過疎化が進んで人里に野生動物が頻繁に出没。結果、人里近くにまで生息域を拡大しているという。

「室内と野外を行き来するネコは、興味本位で小動物を追いかけてマダニの生息環境にも入っていく。結果、マダニの宿主となる事例が年々増加。私が診ているネコでもマダニがついているケースは多い」(保護猫活動をする臨床獣医師)

 もし、飼いネコがマダニの宿主になったら、もはや毎日接触する飼い主はいつマダニに吸血されて感染症を引き起こされてもおかしくない。

 マダニに由来する感染症はいくつもあるが、近年、注目されているのはSFTS(重症熱性血小板減少症候群)だ。2011年に新たに発見されたウイルスで、国立感染症研究所によれば人が感染した場合は最大で30%の高い致死率を持つ。ワクチンや有効な治療薬もなく、感染自体が生きるか死ぬかの“ロシアンルーレット”という、非常に危険な感染症なのだ。

 新型コロナでも治療薬として期待されながら未承認だった「アビガン」にSFTSへの治療効果が期待されているが、まだ実用化されておらず、現在はとにかくマダニに吸血されないことしか対策がない状況だ。

 そんななか前出の臨床獣医師はこう話す。

「SFTSに感染した動物にかまれて感染することもある。2016年には50代女性がSFTSに感染した野良ネコを連れ帰ろうとしてかまれ、自身もSFTSを発症して10日後に死亡した。放し飼いのネコはむやみやたらに触れてはいけない」

 ちなみに国立感染症研究所によれば、SFTSに感染したネコの致死率は60~70%。飼い主もネコも無事でいるためには、放し飼いをしないことが重要だ。