その〝見切り〟は果たして正解だったのか。巨人が9日のDeNA戦(新潟)に9―2で快勝。チームの連敗を3でストップさせた。この試合ではサイ・ヤング賞右腕、トレバー・バウアー(32)との初対戦が注目されたが、6回までに3本塁打を含む11安打7得点の猛攻で攻略に成功。大物狩りでチームは沸いたが、その一方で球団はバウアーについて獲得をあえて見送る決断をしていたことが分かった。

 G打線が話題の大物右腕から新潟の空に3本のアーチを描いた。1点を追う2回、今季初の一塁スタメンとなった4番・岡本和があいさつ代わりに5号同点ソロをバックスクリーン左に叩き込んだ。6回には大城卓の5号2ラン、ドラフト4位ルーキー・門脇のプロ1号2ランも飛び出し、右腕をKOした。

 投げては若きエース・戸郷が9回143球2失点で今季初完投勝利。原監督は初アーチを含む3安打4打点の門脇に「機動力というかね、それを使いたかったというところですね」と、対バウアーに起用した理由を説明。セ最多タイの4勝目を挙げた戸郷には「ナイスピッチングですね」とうなずいた。

 この日、初対戦となったバウアーはDeNAが球団を挙げた粘り強い交渉の末、来日を実現させたバリバリのメジャーリーガー。今季はドジャースが2300万ドル(約31億500万円)を支払うこともあり、出来高込みで推定4億円で右腕を獲得できた。当然ながら巨人でも〝リーズナブル〟なサイ・ヤング賞右腕は獲得可能選手としてリストアップされていた。

 だが、球団幹部の一人は「ウチはバウアー獲得には動いていない。外国人に関しての方針は、能力の前にまず性格や素行を重視する。結果的に不起訴になったとはいえ、メジャーで出場停止処分となった事実は変わらない。同じ理由で(現ソフトバンクの)オスナの時も獲得には動かなかった」と説明。2018年にDVで逮捕され、MLBで出場停止処分を受けたオスナと同じ理由で獲得を見送ったことを明かした。

 バウアーは21年7月に女性から性的暴行を訴えられ、MLB機構により制限リスト入り。調査を経て翌22年4月に324試合の出場停止処分が言い渡された。不起訴となったこともあり、22年12月に出場停止は194試合に軽減されたが、メジャーで試合に出場できるのは今年の5月23日以降となっていた。

 DeNAサイドは19年12月の二軍施設「DOCK」訪問など、早くからバウアーとの関係を築くと、FAを受けて交渉を開始。ファンクラブ創設、アパレルブランドとの提携など、魅力ある提案で獲得に成功した。

 もちろん各球団にはそれぞれの考え方がある。ライバル球団の判断は尊重するものの、巨人としては譲れないラインが存在するという。

 とはいえメジャーリーガーの年俸が高騰を続けるなか、現役バリバリの選手が日本球界を選択する理由は限られている。今後もバウアーと似たようなケースで来日を希望する有望選手が出てくる可能性はある。

 果たして「素行重視」の姿勢は今後も外国人選手について適用され続けるのか。来季以降もバウアーがメジャーからオファーがなく、再びFAとなった場合は…。巨人の方針に注目が集まっている。