悪質極まりない妨害行為だ。ソーシャルメディアインフルエンサーの新藤加菜氏(29)が殺害予告を受け、立候補を予定している東京・港区議選(16日告示、23日投開票)を直前に政治活動ができない事態に陥っている。新藤氏が悲痛な思いを訴えた。

 新藤氏に殺害予告のメールが届いたのは1日夜のことだ。「新藤かなを殺す」と題し、文面には具体的な殺害手口が書かれていた。その後も「ひとりだとあぶないよ」「もっと殴る」などと書かれたメールが数秒おきに届き、3日までにその数は1万件を超えているという。

 新藤氏は高校生の時からニコニコ生放送の人気配信主として活動し、3年前には東京・北区都議補選に立候補し、若者世代を代表するインフルエンサーとして、表舞台で活動してきた。

 外国人参政権、夫婦別姓、同性婚などに反対の意見を主張し、時にはネットユーザーと対立することもあったが、大きなトラブルはなく、今回のような殺害予告を受けたのは初めてで異常な数の陰湿メールも経験がないという。

 新藤氏は警察に通報。4日にも被害届を提出する予定だが、海外のサーバーを経由しているようで、すぐに発信者の特定は困難とみられる。外出は身の危険があり、連日行っていた駅立ちやビラ配りなどの活動はできない状態に追い込まれた。

「本当に怖い。ネットで何年間も活動してきて、誹謗中傷には慣れているが、殺害予告には泣きました。何が理由かわかりません。昨年、安倍さんの件(安倍晋三元首相の殺害事件)もあったのでリアルだし、愉快犯であっても、どれだけ意見が違っても暴力での解決はあってはいけない。言論の自由を守ってほしい」と訴える。

 候補者が妨害を受けるケースでは、先月末にも神奈川県知事選に立候補している黒岩祐治知事(68)が街頭活動中に男から体当たりされそうになれば、世田谷区議選に立候補予定の女性が演説中に無理やりキスされ、男が強制わいせつ容疑で逮捕される事件も起きたばかりだ。

 告示まで2週間を切った中での殺害予告は、立候補の取りやめを迫る脅迫行為でもある。

「撤退はしません。でも表で活動できない可能性がある。無所属で独り身だし、駅頭をやってる時もボランティアの方がいない時もある。警察からは1人では活動をやめた方がいいと言われているが、みんなの前で手を振りたいし、演説をしたい」(新藤氏)

 なんとか活動を再開させたいが、殺害予告の恐怖は消えないとあって、やり場のない怒りをにじませた。