女子プロレス「スターダム」の人気ユニット「コズミック・エンジェルズ(CA)」が揺れている。2021年9月のスターダム参戦から、いまだ自力勝利がない月山和香(31)が25日の横浜武道館大会で初勝利を挙げられなければ、ユニット追放&スターダム退団となるからだ。運命のデッドラインが迫る中、一向に勝利の兆しが見えない月山に救いの手を差し伸べたのがCAリーダー・中野たむだ。追放を宣告した張本人であるにもかかわらず、奮起を促すため課した試練とは――。

中野(右)は自作した亀の甲羅を月山に手渡した
中野(右)は自作した亀の甲羅を月山に手渡した

 発端は昨年12月の後楽園大会だった。試合で敗れた月山に対し、中野が「このままじゃ一生勝てない。あと3か月、それでもダメならCAから出てってもらう」と最後通告を突きつけたのだ。

 だが、年が明けても結果を残せない日が続き、リミットとなる25日横浜大会では中野&月山VS高橋奈七永&KAIRIが決定。月山はスターダム退団もかけて臨むことを決め、同大会まで欠場することになった。

 さすがに笑顔が消えた後輩の姿を見ていられなかったのだろう。この日、中野は都内のスターダム道場に月山を呼び出した。説教なのか…おびえた様子の月山に、中野は拍子抜けするかのような明るい口調で「月山に特別メニューを用意しました」と語りかけ、段ボール製の「亀の甲羅」を手渡す。徹夜で自作したものだという。

 そして「今日からこれに20キロの重りを入れたものを背負って、練習してもらう。これは知り合いの仙人が『武道は勝つためじゃなく、己に負けないために励むもの』って教えてくれた特訓なの」とアニメ「ドラゴンボール」に登場する亀仙人の修行をほうふつとさせるメニューを説明した。

 何が何だかわからないが、中野が「まずはそれを背負って道場全体の掃除をして身を清めます」と指示すると、月山は律義に「はい! お願いします!」。甲羅の重さで押し潰されそうになりながらも、約20分かけてリングの清掃を終えた。お次は2分間リング内を走り続ける筋力トレーニングで、中野も同様に甲羅を背負って鼓舞する。

中野(左)と月山はこのままの格好で公園へ
中野(左)と月山はこのままの格好で公園へ

 ただし、これはあくまで準備運動。今度は好奇の視線にさらされながら公園に移動し、中野が「月山が倒したいのは高橋奈七永だよね? 50キロのたむと、その20キロの重りでちょうど高橋奈七永の体重70キロと同じになる。甲羅を背負ったたむをおぶって公園を3周走ろう」と提案。月山は「やります!」と中野を担ぎ3周を走り抜いた。

 後輩のひたむきな姿に思わず涙ぐんでしまった中野だが、心を鬼にする。

「次はたむの知り合いの会長が、あらゆる厳しい修行を経て見つけたとっておきの特訓なの」と切り出し「あらゆるものに感謝して、正拳突きを1万回続けます!」。

甲羅を背負った中野(左)と月山は拳を突き出した
甲羅を背負った中野(左)と月山は拳を突き出した

 これまたアニメ「HUNTER×HUNTER」に登場するアイザック=ネテロ会長を想起させる特訓を課した。髪を振り乱しながら拳を突き出す月山。その姿を見つめる幼児の目を、母親がそっと隠す場面もあった。600回まで見守った中野は、仕事のため先に帰宅することに。「誰かに勝つためじゃなくて、自分自身に負けないことが大切」とエールを送り、亀の甲羅を背負ったまま去っていった。

 一人残された月山はまじめに課題をこなし、公園で3000回を達成。残り7000回は自宅でやり遂げたそうだ。もちろん、初勝利を挙げたい気持ちは本人が一番強い。実は両親に“ある告白”をしたいからだ。

 米ニューヨーク生まれの帰国子女である月山は、医師の父を持つ厳格な家庭で育った。幼少期にはソフトボールを習うことさえ禁止されたほどで「父に(プロレスラーをやっていると)言ったら気絶すると思って…。初勝利するまでは絶対言わないって決めてる。勝ったらまず、親に伝えたいです」と決意を込めた。

 先日、久々に実家に顔を出すと、月山の異変を察した父がいたわってくれた。「手作りの甘酒を出してくれて、『お前も大変なんやな』って言ってくれて涙が止まらなくて…。感謝の正拳突きの成果を父にささげたい」。悲願の初勝利をこの手でつかんでみせる。

中野(左)はワールド王者ジュリアに挑戦する((C)スターダム)
中野(左)はワールド王者ジュリアに挑戦する((C)スターダム)

【赤いベルト取りに全開】一方の中野たむも大一番が控えている。4日の代々木大会では、雪妃真矢相手に両者リングアウトによる決着でV2を果たしたワールド王者ジュリアの前に登場。「この赤いベルトをかけて私と戦ってほしい」と因縁のライバルに挑戦状を叩きつけ、4月23日横浜アリーナ大会での王座戦が決まった。これまで白のワンダー王座をかけて3度対戦している両雄だが、ワールド王座戦での激突は初。

 中野は「月山のことも勝たせるし、私は赤いベルトが欲しい」と訴えている。