【取材の裏側 現場ノート】大相撲初場所7日目の14日、元関脇隠岐の海(37)が現役を引退し、年寄「君ヶ浜」を襲名した。同日に開かれた引退会見では「何年も前から自分の相撲が取れなくなって、気持ちで何とかカバーしてきた。最終的には自分の気持ちが切れました。関取になれて、幕内、三役にも上がれた。悔いはない」と心境を語った。
記者が大相撲担当となって間もない2010年の春場所前、新入幕の隠岐の海を単独で取材する機会があった。190センチの長身と正攻法の四つ相撲で「大器」として期待される一方、当時からイケメン力士としても注目を集めていた。ひとしきり相撲に関する質問を終えると、ふと「周囲から〝イケメン〟と呼ばれて、どう感じます?」と聞いてみた。
隠岐の海の答えは「正直、そのことで周りからからかわれたりして、困っているくらいなんです。実力が付いてからそう言われるのなら、まだいいんです。力のないうちから言われても、カッコ悪いじゃないですか」。新入幕にも浮かれず、自らの立ち位置を冷静に見つめている姿が印象的だった。もっとも、ほかならぬ記者自身が深く考えずに「イケメン」と記事に書いていたのだが…。取材後に猛省したことも付け加えておく。
あれから13年で幕内通算517勝を積み重ね、三賞5回、金星4個を獲得。常に真っ向勝負を貫き、誰もが実力を認める存在となった。その間には、映画「渾身(こんしん)」や東京五輪の招致動画にも出演。土俵の中でも外でも〝絵になる男〟は、完全燃焼して現役生活に別れを告げた。
(大相撲担当・小原太郎)












