7月に銃撃で死去した安倍晋三元首相(享年67)の事件現場となった奈良県奈良市にある近鉄大和西大寺駅前のガードレールが19日、撤去された。現場には慰霊碑や銃撃された場所を示すモニュメントなどが作られる予定もなく、保守派を中心に反発の声が上がっている。このまま安倍氏の足跡をたどる地はなくなってしまうのか。
事件から約5か月たったこの日、安倍氏が演説中に襲われた三角地帯に設置されていたガードレールなどが撤去された。奈良市側は市民に意見を聞き、否定的な意見が多かったとして、撤去を決めていた。
来年3月には完全に車道となるほか、周囲に慰霊碑や事件があったことを示すレリーフなども設置されないとあって、ネット署名サイト「change.org」では、慰霊碑建立再検討のために駅の道路整備の一旦中止を求める署名運動も行われている。
呼びかけ人は「有識者会議からの意見をまとめ市長が独自に判断されたもので、奈良市議会での議決や住民投票が実際に行われたわけではない。今後も日本国民だけではなく世界中から献花に訪れたいという外国の方が多数奈良市を訪れる事は疑いない」と訴え、開始3日で4000筆以上を集めている。
自民党関係者は「世界中から追悼された安倍氏が亡くなった現場で、まるで何もなかったかのように進めている市役所側の動きは、臭いモノにフタでもしたいのかと感じてしまうほど。そこまで記憶に残したくないのか」と首をかしげた。
海外に目を向ければ、9月に安倍氏とパイプが太かった台湾では、高雄市の廟に安倍氏を追悼する等身大の銅像を建てている。また中東のエジプト・カイロを先月、訪問した小池百合子都知事が驚きの声を上げたのは現地にあふれた「安倍晋三」の名前だ。
漢字で「安倍晋三」と名付けられた歩道橋やガソリンスタンドがあれば、「Shinzo Abe」の名前を持つ幹線道路もある。エジプト支援に貢献した安倍氏を記念し、今年2月に完成していたものだが、今では安倍氏の足跡をたどることができる貴重な〝世界遺産〟となっている。
翻って日本ではどうか。安倍氏の許可を得て、昭恵夫人がオープンさせた東京・神田の居酒屋「UZU」は10月で閉店。その昭恵氏の名前も浮上した「安倍晋三記念小学校」計画の場所だった大阪・豊中にある森友学園の「瑞穂の國記念小學院」は、手入れがされずになかば廃虚化している。
日本に安倍氏をしのぶ場所はないのか。自民党議員秘書は「自民党本部には安倍氏の肖像画が掲げられているが、一般の人は原則出入りできない。衆院第1議員会館12階にあった安倍氏の事務所も9月に撤去され、今は空き家。案内板も黒塗りになっています」と話した。
この部屋はどうなるのか。「過去に亡くなった議員の例を見ても議員会館の部屋が〝永久欠番〟的に使われないことはないでしょう。次の衆院選後のタイミングで、部屋の入れ替え、割り当てがあるので、それこそ『安倍さんが使っていた部屋を使いたい』という保守系の議員が殺到するのではないか」(同)
議員会館最上階の角部屋で、首相官邸や隣接するホテルを一望できる最高のロケーションでもある「1212」号室。一般人が追悼に来ることは簡単ではないものの、議員にとってはここが〝聖地〟となるかもしれない。












