【多事蹴論(58)】日本代表の“神頼み”事情とは――。1931年から日本サッカー協会のシンボルマークに採用されている3本足のカラスは「八咫烏(ヤタガラス)」という神鳥。日本神話に登場する導きの神で太陽神とも言われる。日の当たる場所へ導く神であり、協会ではヤタガラスを「サッカーの神様」と位置付けて、日本代表のユニホームにも必ず“神鳥”がデザインされたエンブレムが付くなど日本サッカーの象徴とされている。
そんな中、協会側ではA代表や五輪代表が出場権を獲得して臨むW杯や五輪といった世界大会の直前、ヤタガラスがまつられる和歌山の「熊野三山」の三社一寺(熊野那智大社、熊野本宮大社、熊野速玉大社、青岸渡寺)を公式参拝するのが慣例だ。日本代表が初出場した1998年フランスW杯以降、続けているもので、協会幹部らが同地に足を運び、必勝を祈願してきた。
これまで日本代表は6大会出場で新興国ながら3度(02年日韓、10年南アフリカ、18年ロシア)の決勝トーナメント進出を果たした。7大会目となるカタールW杯(20日開幕)に向けても、協会の田嶋幸三会長、反町康治技術委員長、元日本代表キャプテンの宮本恒靖氏が10月26、27日に同地を訪問し、森保ジャパンの勝利を祈った。田嶋会長は「日本は力をつけている。いい試合をしてくれると期待している」と語っていた。
一方、日本女子代表のなでしこジャパンは、都内の神社で必勝祈願を行ってきたという。五輪で初めてサッカー女子が採用された1996年アトランタ大会で初出場を果たすも1次リーグ敗退。2000年シドニー五輪は出場権を逃すと、出場権を得た04年アテネ五輪前に、新宿の熊野神社で必勝を祈願すると、1次リーグを突破し、ベスト8入り。08年北京五輪ではメダルに届かなかったものの、ベスト4に進出するなど大躍進。同神社にはサポーターが多く訪れるなど女子サッカーの“聖地”とされた。
ただ、なでしこジャパンでは11年のドイツ女子W杯を前に、初めて男子代表と同じように「熊野三山」で公式参拝を実施し、三社一寺からは「勝守」など5つのお守りが贈られたという。その成果はすさまじく、日本は1次リーグを突破すると、勝ち上がった決勝戦では未勝利の米国を相手にPK戦に突入し、史上初の世界制覇を実現。空前の「なでしこフィーバー」を巻き起こした。
当時の女子サッカー関係者は「偶然かもしれないけど“熊野詣で”のおかげじゃないか」と語っていたが、続く12年ロンドン五輪で銀メダル、15年カナダ女子W杯でも準優勝となでしこジャパンの快進撃は続いた。森保ジャパンも神様の“加護”を受けて、カタールで大躍進できるだろうか。 (敬称略)











