また新たな力が芽吹いてきた。巨人の高卒3年目左腕・井上温大(21)が23日の中日戦(バンテリン)に先発し、待望のプロ初勝利をマーク。同一シーズン、同一球団でプロ初勝利を挙げた8人目の選手となり、プロ野球史上初の快挙にもなった。「若手育成」の大方針のもと、着実に成果が出ていることは球団と現場にとって喜ばしい限りなのだが、その背景では誤算もあったようで…。

 チームが9―3の大勝を収めると、井上からも自然と笑みがこぼれた。味方の大量援護にも恵まれ、6回95球3失点の粘投。2019年にドラフト4位で入団し、昨年5月に左肘頭骨を骨折。同年オフに育成契約に移行し、今年7月に支配下に復帰した。4度目の先発で、ついにウイニングボールを手にした苦労人は「いろんな人の支えがあったので、いろんな人に感謝しながら、これからも野球を頑張りたい」と汗をぬぐった。

 これで堀田、戸田、赤星、大勢、平内、山崎伊、直江に続いて8人目のプロ初勝利。原監督が井上に「悔しい思いもしただろうし、勉強をしながら勝ち投手になれた。これがすべて」と拍手を送れば、桑田投手チーフコーチも「スピードで押すところとコントロール重視で勝負するところ。使い分けができるようになってきた。そのへんがすごく成長した」とねぎらった。

 これだけの若手投手陣にチャンスが与えられたのは、球団と現場が一体となった育成計画が大きな後押しになった。しかし、本来のプランからはかなりの〝誤差〟も生まれていたという。

「去年あれだけ頑張った高橋は当然、先発ローテーションとして計算されていた。それと山口の不調も計算できなかった。それと外国人の2人。これも大きかった」(球団スタッフ)

 昨季の高橋は自己最多の11勝を挙げ、チームの勝ち頭となった。だが、今年は春季キャンプ中から調子が上がらず、開幕ローテ入りも逃し、今季は0勝のまま。ベテランの山口もオープン戦で3試合連続失点を喫するなど開幕前に二軍降格となり、一軍では救援登板した1試合にとどまっている。また、新加入したシューメーカーは4勝8敗。6月25日を最後に3か月も白星から遠ざかり、右打者との対戦に難を抱えるアンドリースは5戦未勝利(2敗)だ。

 今後を見据えれば、1人でも多くの若手が台頭することはチームの強化につながる。その半面、実績のある投手たちが成績不振だったこともあり、若手により多くのチャンスが舞い込んだ点は球団にとってはもどかしいところでもあるようだ。

 何はともあれ、井上の活躍もあってチームは3位を堅守。4位の阪神と広島に1・5ゲーム差をつけた。左腕が吹き込んだ新風をCS進出への追い風とできるか――。