綱の自覚も十分だ。大相撲秋場所初日(11日、東京・両国国技館)、横綱照ノ富士(30=伊勢ヶ浜)が小結霧馬山(26=陸奥)を寄り切って白星発進した。7月の名古屋場所は無念のV逸。実は終盤に大ケガを負いながらも、一人横綱の責任感から土俵に立ち続けていたという。今場所は体調を回復させて万全の構え。2場所ぶり8回目の優勝へ向けて、死角はなさそうだ。

 照ノ富士が霧馬山を力強く寄り切って3場所ぶりの初日白星。自身8回目の優勝へ向けて好スタートを切った。取組後は取材に応じなかったが、土俵下の佐渡ヶ嶽審判長(元関脇琴ノ若)は「落ち着いていた。慌てることなく、ヒザが崩れなかった」とうなずいた。

 先場所は優勝争いを繰り広げながらも最終盤に連敗。11勝4敗に終わり、小結逸ノ城(29=湊)に賜杯を譲った。実は、そのV逸の裏で横綱は思わぬアクシデントに見舞われていたという。部屋関係者が明かす。

「11日目の豊昇龍(立浪)との取組です。結構長い相撲で(横綱が)振り回されたんですよ。そのときに左足の中指を痛めてしまった。しかし、場所中だったのでレントゲンを撮ったところでどうすることもできず、撮らなかった。ですが、横綱は『多分、折れてる』と話していました」

 その後は痛み止めなどの〝応急処置〟で乗り切ろうとしたが、14日目の大関正代(時津風)との取組を終えて、今度はヒザや肩にも痛みが出たという。同関係者は「(取組後に)東京から名古屋までメインドクターに来てもらって治療してもらいましたが、ボロボロだった。やれることはやったんですけど(千秋楽で)負けてしまった」と振り返った。

 先場所はコロナ関連の休場力士が続出。13日目は幕内18番中7番が不戦の異常事態となった。故障者を含めて十両以上の休場23人(幕内16人)は戦後最多。大相撲を背負う一人横綱までもが土俵から姿を消すわけにはいかなかった。

 賜杯奪回を目指す今場所に向けては自らの体と向き合いながら調整を行い、約2年8か月ぶりに再開した夏巡業、出稽古などで精力的に汗を流してきた。「(先場所から)月日がたって傷も癒えて、痛みも取れた。しっかり治療してきたので問題ないと思います」(同関係者)

 今場所は23年ぶりの3関脇3小結。小結阿炎(錣山)は負傷のため休場となったものの、照ノ富士は「勢いのある力士とやるのは楽しい」と若手や中堅の台頭に刺激を受けている。体調万全の今場所は、結果でも綱の力を証明する。