【気になるあの人を追跡調査!野球探偵の備忘録(8)】かつて「日本一速い中学生」と言われ、今秋のドラフト候補としても注目されているのが、佐野日大(栃木)の五十幡亮汰外野手だ。いまや日本陸上界のホープとなった、サニブラウン・アブデル・ハキーム(城西大城西高)に中学時代に完勝。“怪物を倒した男”の現在を追った。
中学では硬式野球の東京神宮リトルシニアに所属する一方、陸上部にも所属。全日本中学陸上競技選手権大会では100メートル10秒92、200メートル21秒81の堂々たる成績で2冠を達成し、同大会に出場したサニブラウンは100メートル3位、200メートルは2位だった。
「直前の関東大会ではサニブラウンに負けて2位だったので、絶対に越してやろうと思ってた。大会のたびに顔を合わせるので次第に仲良くなって『高校では(野球と陸上の)どっちやるの?』『お互い頑張ろうね』とか話してて、よきライバルでした」
洛南など複数の陸上名門校からも声がかかったが、プロ野球選手という幼いころからの夢を追い、高校では陸上を封印。佐野日大の門を叩く。
「周囲からは『(野球と陸上の)二刀流はできないの?』とよく言われました。でも、僕はもともと野球一本なんです」
高校進学後も自慢の快足は健在、学校の体力測定では50メートル5秒6を記録した。「それもほとんど準備運動もせず、軽く測ったタイムですからね。本人はむしろ速すぎて困ってるみたいで、体が止まらないで行き過ぎちゃうと。僕ら一般人にはちょっとわからない感覚ですが…」。松本弘司監督も驚きを隠さない。
野球でも自慢の快足を生かし、盗塁の山を築いているかと思いきや「実は盗塁は苦手なんです」と打ち明ける。
「まだスタートが自分のものになってなくて、盗塁のサインが出てもなかなか次の球で行けなかったり。いつも気持ちが落ち着かないです(笑い)。陸上のスタートは得意なんですけど」
目指すのは足だけでなく、三拍子揃った選手だ。「プロで憧れの選手は山田哲人さんや糸井さん。ひとつの魅力もすごいけど、走攻守揃った選手にひかれます」。体を大きくするため、中学時代は夕食後に餠を5つ食べ、増量に励んだ。寮生活の現在は朝食にどんぶり飯を2杯、夕食では3杯を平らげ、夜食でおにぎり3つを詰め込むという。
そんな五十幡に、松本監督も期待を寄せる。「とにかく真面目で努力家。どんなことでも手を抜かない。ランニングでも10本、20本と全力で走るので、肉離れとかこっちが心配しちゃうくらい」。秋からは副主将を任され、リーダーシップも出てきたという。
陸上をやめたことに未練はないのか。直球の質問をぶつけると「個人競技と違って、野球では練習でのつらさや勝ったときのうれしさを分かち合える。それが一番です。小中ではリーダー的なポジションを任されることもなかった。副キャプテンの今は、責任も感じるようになってきました」という答えが返ってきた。多くの財産を糧に、今は最後の夏を見据える。
ちなみにランニングホームランの経験は。「この前一度狙いにいったんですが、ギリギリホームでアウトになっちゃいました(笑い)」。高校球界の韋駄天は、この先もどんどん加速する。
☆いそばた・りょうた=1998年11月27日生まれ。埼玉県行田市出身。行田小1年の時、行田東フェニックスで野球を始める。中学では東京神宮リトルシニアに入り、中学2年時にジャイアンツカップ2位、中学3年でも全国2位の実績で、U―15日本代表にも選出される。陸上部では3年の全日本中学陸上競技選手権大会100メートル、200メートルの部で優勝。ジュニアオリンピック記録会でも100メートル10秒79をたたき出し「日本一速い中学生」として一躍有名に。卒業後は佐野日大に進学、現在は副主将としてチームをまとめる。ポジションはセンター。171センチ、63キロ。右投げ左打ち。












