【緩和ケア医・大津秀一 長生きのレシピ】2020年最後の連載となります。コロナ禍に揺れた1年、皆さんにとってどんな年だったでしょうか。行きたいところにも行けず、会いたい人にも会えず、誰にとっても我慢を強いられた1年だったかとは思います。だからこそ、来年はいい年にしたいですね。今回は、改めてどうして病気にならない生き方が大事なのかをお伝えしようと思います。
緩和ケアの考え方として、苦痛を4つの側面から捉えることを行っています。1つ目は「からだのつらさ」。痛みや吐き気、息苦しさなど、病気になれば多かれ少なかれ誰もが向き合う事象となります。
人が感じるつらさはそれだけではありません。「気持ちのつらさ」もからだと同様に相当、しんどいことではあります。今後を考え、不安感や恐怖、絶望や孤独感にさいなまれます。中には思い悩むあまり、うつ病になる方もいます。
3つ目は「社会的なつらさ」です。何もつらいのはからだと心ばかりではありません。経済的な問題、家族との人間関係が悪化した方、仕事の問題など、それまで社会的に居場所をしっかり感じていたのに、病気になった途端に精神的にストレスをためたり、周囲の人と関係が悪化する場合もあります。肉体、精神ともに十分なつらさを感じる事象であります。
最後は「スピリチュアルペイン」です。この言葉を最近は聞く機会も増えてきたのではないでしょうか。スピリチュアルというと、日本ではいまだに少し怪しげな印象に聞こえてしまうこともありますが、世界保健機関(WHO)の定義にも含まれている言葉です。スピリチュアルペインとは主として存在に関するつらさと考えます。
スピリチュアルという言葉を端的に説明するのであれば、人生の意味に関することとなるでしょうか。たとえば高齢になって、足腰が思うように動かなくなる、自分で自分のことができなくなったときに「私は何のために生きているのか」など、生きる意味のゆらぎが出てきます。これは病気の時にも同様です。からだや心などのつらさからスピリチュアルペインを自覚されることはよくあります。
この4つのつらさをなるべく回避するためにも、健康に関してなるべく早く準備することが大事です。年明けからは、予防医学の面でも重要となるかかりつけ医について、お話ししていきます。皆さま、良いお年をお迎えください。
☆おおつ・しゅういち 茨城県出身。岐阜大学医学部卒業。内科専門研修後、ホスピス、在宅、ホームなど様々な医療機関で終末期医療を実践。東邦大学病院緩和ケアセンター長を経て、オンライン診療も行う早期緩和ケア大津秀一クリニックを設立。多くの終末期患者と向き合ったことで、予防医学にも力を入れる。著書に「1分でも長生きする健康術」(光文社)、「誰よりも早く準備する健康長生き法」(サンマーク出版)など多数。












