「おはよう」は英語で「Good morning」、フランス語なら「Bonjour(ボンジュール)」、ドイツ語は「Guten Morgen(グーテンモルゲン)」になりますね。でも、日本語の「おひんなり」が「おはよう」という意味だと分かる人は、標準語圏内にはほとんどいないのでは?

「おひんなり」は石川や徳島で使われている方言で、「おひるなる」という言葉が変化したものといわれています。

「お昼になる」なら「こんにちは」では、と思うかもしれませんが、「おひるなる」を漢字に直すと「御昼成」で、これは「お目覚めになる」という意味の女言葉が語源のため、「おはよう」の意味で使われるのが正しいようです。

 これだけでも難解ですが、「おはようございます」と丁寧語に変えると、「おひんなりあすばいたか」(石川)、「おひなっておいでるかのおや」(徳島)と、さらにややこしくなります。

 もっと理解が困難な「おはよう」の方言があります。それは、山形の「ただいま」。「ただいま」と言えば「お帰りなさい」という返事が返ってくるのが常識ですが、その常識が非常識で、「ただいま」には「ただいま(おはよう)」と応えるのが山形スタイルです。

 同じ「ただいま」も、山梨で使うと「こんにちは」という意味になりますから、山形の人と山梨の人があいさつをしたら、お互いにキョトンとするでしょう。

 ところで、「おはよう」を「はやい」と言うのは佐賀。もともと「おはよう」のあいさつは、「早い」という言葉が変化した「はよう」に「お」が付いたものですから、これはなんとなく理解できます。でも、「はやーむし」(群馬)や「はやいわて」(三重)と言われると、はてさて何のことだかさっぱり分からなくなります。

 ◆平川陽一 早稲田大学卒。主に歴史ミステリーの分野で活躍。著書に「世界遺産・封印されたミステリー」「戦争で読む日本の歴史地図」「日本列島 名城の謎」などがある。