歴史的瞬間は見られるか。フィギュアスケート男子で五輪2連覇の羽生結弦(26=ANA)がいよいよ全日本選手権(25日開幕、長野・ビッグハット)で今季初戦を迎える。新型コロナウイルス禍を回避して今年はグランプリ(GP)シリーズを欠場。約10か月の自粛期間を経て千両役者が帰って来るが、ファンや関係者が最も気になるのは人類初のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)だ。果たして跳ぶのか。その可能性を探った。

「僕が元気なうちにぜひ見たいですよ。歴史的なことだからね」

 こう笑顔で話すのは元国際審判員でフィギュア界の草創期を知る杉田秀男氏(85)。今、ファンはもちろん、全フィギュア関係者が羽生の4回転半に注目している。その完成度は“極秘練習”でベールに包まれているが、周囲からは「状況次第で跳ぶのでは」と期待の声が漏れてくる。

 羽生は今年2月の四大陸選手権を初制覇し、男子史上初となる主要6大会全制覇の「スーパースラム」を達成。その直後にコロナが世界を襲い、ぜんそくの持病を抱える羽生はGPシリーズ欠場を決断した。「私が動くことによって、多くの人が移動し集まる」という気遣いも忘れなかった。そんな中、羽生は先月下旬に全日本選手権にエントリー。久々の大舞台で人類初の大技披露となれば、これ以上ないストーリーだろう。

 では、実際にどうか。杉田氏は「挑戦するからには中途半端な形ではやらないと思う。それなりにイケる!って感覚がないとやらないでしょう」と語る。前述の四大陸選手権V後、羽生は大技の完成度について「もうちょっとって感じ」と表現。3月に開催予定だった世界選手権(中止)での投入も示唆していた。自粛期間の特訓で精度がさらに磨かれている可能性は高く、杉田氏は「リンクや氷の状態が良く、体調も万全なら大会前の練習で1回はトライするはず。そうなれば本番で…という可能性はありますね」と分析する。

 一方、フィギュア関係者の中には「ショートプログラム(SP)次第」と予測する人も多い。

「SP終了時に優勝を争っていたら回避すると思うけど、2位に20点差くらいつけていたり、逆に優勝の可能性がなくなったら投入するのでは?」(フィギュア関係者)

 実際、羽生は昨年12月のGPファイナルのSPで世界王者のネーサン・チェン(21=米国)に12・95点の大差をつけられると、翌日の公式練習で4回転半にチャレンジ。結局、本番では跳ばなかったが“爪痕”を残すことにこだわった。

 かねて羽生は4回転半について「僕自身のプライド」と表現。今大会、内に秘めた思いが何らかの形で刺激される展開となれば、夢は現実となる。