【広瀬真徳 球界こぼれ話】日本ハム・松本剛外野手(28)の打棒が止まる気配を見せない。

 今季開幕からレギュラーに定着すると打撃が「開眼」。3、4月の出場23試合で打率4割1分8厘をマークすると、その後も勢いは衰えていない。5月29日時点で打率はリーグトップの3割8分3厘。盗塁数もリーグトップタイの「15」を記録する。この調子なら打撃部門での「2冠」も夢の話ではないだろう。
 今年8月で29歳を迎えるプロ11年目の躍進。一体何があったのか。

 覚醒の要因に出場機会の急増がある。

 昨季までの日本ハム外野陣は西川(現楽天)、大田(同DeNA)、近藤らが定位置を確保。松本剛の出場機会は代打や守備要員などに限られていた。実際に過去10年で松本剛が100試合以上出場したシーズンは2017年の115試合だけ。昨季の出場は50試合にも満たなかった(47試合)。だが、昨オフに球団が西川、大田を放出したことで状況が一変。新庄監督が「レギュラー横一線」を打ち出したこともあり、松本剛にも外野の一角を争える環境が整った。さらに指揮官が監督就任直後から目にかけていたプロ2年目の俊足外野手・五十幡も3月に腰椎椎間板ヘルニアで戦線離脱。こうした流れも松本剛には追い風になった。

 もっとも、ライバル不在だけでこの成績は残せない。打撃面の成長も目を見張るものがある。

 先日、本人は自身の好調の理由を「相手投手のイメージを持ちながら(毎回)打席に入れているのが大きい。あとは運ですね」と謙遜気味に話していた。松本剛は他を圧倒するパワーや技術こそないものの、長年の代打稼業や途中出場で培った相手投手に合わせられる打撃能力がある。相手の傾向や持ち球を踏まえたうえで最善策を探る。この柔軟な対応力が出場機会増に伴う経験値と重なり好成績をもたらしている。

 11年ドラフト2位で日本ハムに指名された直後、埼玉県内の松本剛の実家に取材に伺ったことがある。その際、松本剛の母が本人の性格面での長所をこう話していたことを思い出す。

「剛はどんな場面でも置かれた状況に合わせて生きていけるタイプですから。厳しいプロの世界でも自分の居場所を見つけてうまくやっていけるはずです」

 謙虚で協調性のある性格がブレークを遅らせた感があるものの、今ではそのプレースタイルが予測不能な「ビッグボス劇場」に欠かせない存在になりつつある。

 交流戦最初のカードとなった24日からのヤクルト3連戦では2本塁打を含め計8安打を荒稼ぎした。遅咲きの逸材が今季、大輪の花を咲かせられるのか。好感が持てる人間性を含め、今後のさらなる活躍に期待したい。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。