軍制服組トップは姿見せず――。プーチン大統領の演説が注目されたロシアの戦勝記念日の式典では、ワレリー・ゲラシモフ参謀総長(66)の不在も話題になった。ゲラシモフ氏はショイグ国防相(66)とともにウクライナ侵攻の責任者とされ、2月の開始時から動向が注目されていた1人だ。

 プーチン氏が侵攻直後に戦略核の運用部隊に警戒態勢をとるよう指示を送った際に姿が確認されて以降、ショイグ氏とともに表舞台から消えたことで、粛清説や病気説、密命説から死亡説などが飛び交う事態になっていた。

 ゲラシモフ氏の動向が最後に確認されたのは先月30日だ。ウクライナ東部のイジュームで、ロシア軍の作戦本部が置かれている学校を訪れ、最前線を視察。すると米英の情報機関から位置情報を伝えられたとみられるウクライナ軍が学校を砲撃。200人のロシア軍兵士や十数人の将校が死亡したとされ、ゲラシモフ氏の死亡説も流れたが、砲撃を辛くも逃れ、スネに榴散弾を浴び、負傷したという説が濃厚となっていた。

 一方、心筋梗塞や毒による半身不随説も出ていたショイグ氏は先月、噂をかき消すかのようにプーチン氏との会談で健在をアピール。この日のパレードでもプーチン氏と話し込むシーンが何度も映し出された。

 ショイグ氏とゲラシモフ氏は核兵器使用の際の指揮系統で、重要なポジションにある。プーチン氏が核使用を指示したとしても2人の同意がなければ、成り立たない仕組みとなっている。

 プーチン氏の独裁体制で無意味とされるが、それでも核ボタンを握る重要なキーパーソンとして、プーチン氏同様に注目される事情がある。

 ゲラシモフ氏の式典不在について欧州メディアでは「出席が絶対の軍制服組トップが姿を見せられないほどケガは重傷だったのでは」「戦勝記念日までに戦果を上げるとしながらも達成できなかったことで、プーチンの怒りを買い、出席を許されなかった」など、臆測が飛び交う事態になっている。

 そんな報道が出るのを予期してか、プーチン氏とショイグ氏が肩を並べて歩くシーンでは、傍らに「チェゲト」といわれる核発射の通信機械が入っている黒いブリーフケースを持った屈強な男2人が目立つように映り込むなど、“演出”に余念がなかった。