高さ約85メートル――。米ニューヨークのブルックリン橋の塔からイースト川へ飛び降りた男が奇跡的に生還した。致死率が極めて高いとされる高さから、なぜ助かったのか。外傷外科医は「着水時の体勢」が生死を分けた可能性が高いと分析している。米紙ニューヨーク・ポストが3日、報じた。
ガリムジャン・アバイルダエフ容疑者(44)は2日、ブルックリン橋の北塔によじ登り、全裸になってイースト川へ飛び降りた。高さは約85メートルに達した。
アバイルダエフ容疑者は港湾警察によってすぐに川から救助され、ベルビュー病院へ緊急搬送された。容体は安定しており、警察は3日、無謀危険行為、落書き、公然わいせつ、不法侵入、秩序紊乱行為の各容疑で訴追したと発表した。
驚くべきは、約85メートルも落下しながら容体が安定していることだ。警察はけがの詳細を公表していない。
30年以上の経験を持つ外傷外科医デービッド・シャピロ医師は「80メートル以上の橋から川へ飛び降りたり転落したりした場合、致死率は極めて高い。これほどの高さから落下すると莫大な運動エネルギーが発生し、全身に命に関わる深刻な外傷を負います」と説明した。
シャピロ医師は、生還できた理由としていくつかの可能性を挙げる。例えば、アバイルダエフ容疑者が持っていたバッグが〝即席のパラシュート〟の役割を果たし、落下速度をわずかに落とした可能性があるという。
また、可能性はさらに低いものの、岩などが容疑者より先に水面へ落下し、水面を乱したことで衝撃がわずかに和らいだ可能性も指摘した。
ただ、同医師は「そのような状況だった証拠はない」とした上で、生還のカギになった可能性が最も高いのは着水時の体勢だったと説明した。
「手のひらを下にして水面をたたくと大きな水しぶきが上がります。一方、空手の手刀のように縦向きに当てると、水を切るように入っていきます。水に入るときの体勢は、それほど大きな違いを生むのです」
同医師は高飛び込み選手を例に挙げ、「彼らは時速約97キロで水面に突入しても、体勢を整えることで衝撃を最小限に抑えています」と説明した。
「彼らは頭から飛び込むわけではありません。体を完全に一直線の垂直姿勢で固定すれば、水をずっと楽に切り裂くことができます」
シャピロ医師によると、外傷センターでは高所からの転落によるけがを「減速外傷」と呼ぶ。高速走行中の自動車が壁に衝突した際のように、急激な減速によって脳や内臓などに大きな衝撃が加わり、重篤な損傷を引き起こす外傷だという。
このような落下事故では、脾臓や肝臓の裂傷などの内臓損傷のほか、骨や関節の損傷、大腿骨や骨盤の骨折などが起こる可能性がある。足から着地した場合には、人体でも特に衝撃を受けやすい踵骨(しょうこつ)が砕け、両足首に複雑骨折を負うケースもあるという。
さらに「垂直外傷」と呼ばれる足や頭から真っすぐ着地したケースでは、脊椎の破裂骨折や頭蓋底骨折を起こし、脳や脊髄を損傷する危険性も高い。
シャピロ医師は「このようなケースで生還するには、落下速度がわずかに抑えられ、理想的な体勢で着水し、さらに致命的な内出血を防ぐため迅速な外傷治療を受けるという、極めて幸運な条件が重なる必要があります」と強調した。












