韓国保守系の尹錫悦(ユン・ソンニョル)次期大統領の報道官は16日に予定されていた尹氏と革新系の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との会談を延期したと同日発表した。報道官は「実務レベルでの協議が終わらなかった。再び日程を調整する」と説明した。現・次期政権間では、政府関係機関の人事を巡る対立も顕在化している。文氏が青瓦台を去ることになり、話題になっているのは“逮捕”。韓国では大統領を辞めると逮捕されるのが伝統だからだ。
大激戦となった大統領選を経て保守と革新の対立はさらに深刻化。尹氏と文氏は共に、和解に向けた「国民の統合」を訴えており、今回の会談がその第一歩になるとみられていた。現・次期政権間の駆け引き激化で関係修復を危惧する見方も出ている。
そんな中、尹氏側が文氏を逮捕するのではとの声が出ている。韓国大統領は悲惨な末路を遂げることが多い。2000年以降、廬武鉉(ノ・ムヒョン)氏が収賄容疑で捜査され自殺し、李明博(イ・ミョンバク)氏と朴槿恵(パク・クネ)氏は収賄の罪で収監されてきた。
韓国ではなぜ大統領を辞めると逮捕されるのか。韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏はこう語る。
「前任者が逮捕されるのは、それが伝統だからとしか言いようがありません。朝鮮には易姓革命という考え方があります。皇帝や王に徳がなくなると天命が改まり、王朝は倒れ、新たな王朝が建つというものです。その場合、新しい王朝は前の王朝のすべてを否定しなければいけません。高麗から李氏朝鮮への王朝の異動期も、高麗王朝一族の皆殺しと高麗文化の徹底破壊が行われました。おかげで、焼き物の高麗青磁の技術は途絶えました」
韓国は李氏朝鮮後、大韓帝国、日韓併合の時代を経て、現在の大韓民国となった。
但馬氏は「韓国人が日韓併合時代を徹底的に否定するのも、ある種の易姓革命であるともいえます。同様に、新しい大統領が前の大統領やその縁者の罪状を告発し逮捕することは、韓国人にとってそんなに違和感のあることではないのです」と指摘する。
それにしても、文氏が逮捕されるとしたら、どんな容疑が考えられるか。
「罪状など探せば、いくらでも作れます。一番簡単なのは、お金の流れです。韓国は血族社会です。親族のつながりがとても深く、1人の成功者が出れば、他の親族がおこぼれにたかるというのは当たり前の世界です」と但馬氏。大統領といえば、成功者の中の成功者。おこぼれに群がった親族も多いだろう。
「親族に不正なものを含む何かしらのお金、あるいは政治的ポストを与えなければいけません。もし、それを拒めば、『人間としての情がない』『人でなし』と言われてしまいますから。また、地縁意識も根強く、同郷出身者が甘い汁を吸うなんてことも珍しくありません。企業からの収賄も重要な収入源です。ここらへんは歴代大統領の誰もがやっていることなので、突けば、いくらでも罪状を挙げることができます。大統領本人がクリーンでも、その威を借りた親族が同様のことをやっているケースは多いのです」と但馬氏。
尹氏は元検察官。16年に表面化し、朴槿恵氏が罷免されることになった“崔順実(チェ・スンシル)ゲート事件”を担当したことがある。大統領の不正を調べさせるのはお手のものだろう。ただ、韓国大統領は1期5年で再選はなし。5年後の尹氏も…。












