巨人が9日のヤクルト戦(東京ドーム)で延長10回に劇的なサヨナラ勝ちを飾った。最大7点のリードを許しながら、最終的に10―9と引っくり返した立役者は主砲・岡本和真内野手(23)だ。8回の21号同点3ランを含む2本塁打4打点と大暴れで、チームも引き分けを挟み2連勝と上昇気流に乗ってきた。若武者は人知れず打席での“マヌケ顔問題”を抱えていたが、周囲から浴びせられた、いわれなき誹謗中傷に猛反論した――。

 これぞ4番の大仕事だ。背番号25が描いた放物線に大観衆が総立ちとなった。4回までに7点をリードされながら坂本勇の30号ソロ、ゲレーロの2打席連続ソロなどで3点差まで迫った8回一死一、二塁の場面。前の打席で2戦連発となる20号ソロを放った岡本の登場に、本拠地は異様な興奮に包まれた。

 一発が出れば一気に同点。その中で岡本が放った打球は歓喜に沸くG党が待つ右中間席へ。原監督も思わずベンチを飛び出す興奮ぶりで序盤の重苦しいムードから一転、球場内はお祭り騒ぎだ。延長戦に入り、最後は代打・亀井の左犠飛で決着したが、主役は間違いなく岡本だった。

 大歓声に迎えられ、お立ち台に上がった主砲は「打てたことより、勝てたことがうれしいです」と言いながら、珍しくガッツポーズのようなしぐさを見せたことには「あれはバットを投げようと思っただけなんで」と素っ気なく返して再びG党を沸かせた。

 指揮官も「素晴らしい場面で2本のホームランを打った。2本目は私も鳥肌が立つようなね。これがプロの技というか、ファンの皆さんを魅了するというか、見事なホームランだったと思いますね」と最敬礼。また「神がかり的」と表現したように、巨人が7点差以上から逆転して勝利するのは2006年以来、13年ぶりだった。

 これだけの働きを見せれば、心に引っかかっていた“雑音”に言い返しても文句はないだろう。岡本への期待が大きいからだろうが、古参の球界OBから「何だ、あの姿は。巨人の4番が、なぜいつも口を開けている。だらしがない!」「マヌケで締まりがない!」などと散々な言われようでコキ下ろされていた。

 確かに、岡本は打席で口を半開きにして構えている。何か意図があるのか。それとも無意識のうちに口が開いてしまっているだけなのか…。本人に聞くと、こう持論を展開した。

「僕は僕なりに力が入らないように、あえて口を開けているんです。締めると力が入りすぎてしまうので。野球は力を抜くことが大事だと思っていますから。その力を抜くやり方は、人それぞれだと思うんですよね」

 脱力することの重要性について、吉村打撃総合コーチは「上体に力が入っていると、形が崩れて思うような形で打てなくなる。力が入ったままではバットは振れない。初動はできるだけリラックスした方が動きやすい」と説明し「彼の場合は、口を開けるという方法なのだろう。武道やヨガのように、呼吸法という意味合いもあるんじゃないか」とも付け加えた。

 岡本は「ベンチにいる時は分からないですよ。ただボーッとしているだけかもしれないですけど…」とちゃめっ気たっぷりだったが、何はともあれ打席で少々締まりがなさそうに映っても、しっかりとした理由があるわけだ。

 この日は背後に迫るDeNA、広島との差は変わらなかったが、チームにとって主砲の復調は待ちに待った吉報。「僕は“借金”が多いので、また頑張ります」と口を真一文字に結んだ岡本。今後の活躍にますます期待がかかる。