〝スノボ侍〟だ。スノーボード男子ハーフパイプで金メダルを獲得した平野歩夢(23=TOKIOインカラミ)は、人一倍の練習量で「人類史上最高難度」の大技トリプルコーク(TC)1440(斜め軸に縦3回転、横4回転)を習得。また、他の選手が披露したトリックは取り入れないなど、自身の美学を貫いた。その新王者はいったい、どんな男なのか。スノーボードで五輪4大会出場の藤森由香氏(35)が明かした素顔とは――。
3度目の五輪で悲願の金メダルを獲得した平野歩は、TC1440を決勝の3回でいずれも成功させた。昨年12月に自身が決めるまで、誰も成し遂げたことがない大技。スケートボードで出場した昨年夏の東京五輪後に本格的な練習を開始した。ただ、本番直前まで自信はなかったという。
「失敗が多く、毎回悔しい気持ちがあった。イチかバチかのトライはこの場ではリスクがあると薄々感じていたので、中国に入る前に米国で猛特訓して完成させたような感じです」
その一方、通常と逆スタンスで背中方向に踏み切る「スイッチバックサイド」のトリックは、取り入れないことに決めていた。高得点を狙えるため、銀メダルのスコット・ジェームズ(オーストラリア)ら多くのトップ選手が繰り出す中、平野歩は「みんながやるんだったら、そうじゃないところに勝負をかけていきたいというのがありましたし。自分はスイッチを使わない技で圧倒したい気持ちがシンプルに強かった」と自らの〝美学〟を貫いた。
その平野歩について、2014年ソチ五輪まではクロス、18年平昌五輪はスロープスタイルとビッグエアで出場した藤森氏は「普段からしっかり目標に向かって取り組んでいる印象がありますね」と話す。その性格は「昔からなんですけど、すごい物静かで落ち着いている選手」。確かに、この日は得点に納得いかず怒りをあらわにしたものの、感情をコントロールして逆転Vにつなげた。
己の信念を持ち、平常心を失うことなく競技に向き合う。藤森氏は「周りの状況とかにあんまり流されなかったり、雰囲気に影響されない。そういう〝武士〟みたいな強さを感じるんです」と、平野歩の特長を分析する。
また、新王者にはこんな一面も。「物静かに見えて、知っている人にはめちゃくちゃしゃべってくれるんです。私も物静かだと思ってたら、めちゃくちゃしゃべるから意外な部分を持っているなと。ただ、話す内容はいつも体をほぐしているとか、暇があれば腹筋をするとか…(笑い)。普段からそれだけストイックだから、きっと目標としている技をずっとイメージしているんじゃないかなと感じますね」
頭の中には常に「鍛錬」の2文字が刻み込まれているようだ。
東京五輪からわずか半年という限られた時間の中で頂点に立った平野歩は「いろいろ経験してきたことが、自分の中のメンタルも含めて何も怖いものがないという強さに大きく変わった」と自己分析。ドレッドヘアの〝サムライ〟は、これからもさらなる進化を続けていく。












