東京五輪のレスリング女子62キロ級決勝(4日、幕張メッセ)で、川井友香子(23=ジャパンビバレッジ)がティニベコワ(キルギス)を下し、五輪金メダルを獲得した。

 勝利が決まると、川井友は国旗を広げ、マットを一周した。「ずっとずっと、これがしたかった。いつも2位とか3位とか、ちょっとのところで負けてきた。夢みたいです。あこがれの舞台で理想の金メダルが取れてうれしいです」と満面の笑みを浮かべた。

 五輪が1年延期になったことで「一番成長したのが友香子」と金浜良コーチは太鼓判を押す。世界一と評される姉の組み手や技を手本に強化。62キロ級では足りなかった体重、パワーを増やすため、1日5食を胃袋に詰め込むこともあった。本格的にフィジカルトレーナーの指導も受け、パワーアップに成功。体重も今では3食だけで64キロ近くをキープ。外国人選手に負けない体をつくった。

 特訓のかいあり「組み合った感覚が全然違う。相手も組んだ瞬間に驚くと思う」(金浜コーチ)。妹の試合を見た梨紗子(26=ジャパンビバレッジ)も「私がビックリした。『こんなに強くなってる』って。毎日練習していて近くで見ていたはずなのに。『言うことないんじゃないかな』と」と驚くほどだった。

 以前はネガティブに考えたメンタル面も改善した。「言霊(ことだま)があるから、本当のことになってしまう」と否定的な言葉を口にするのをやめた。参考になる本はすべて読んで「今は前向きに考えられるようになった」。本番の舞台でも不安や緊張を上手にコントロールした。

 内向的でおっとりとした性格で知られているが、レスリング界では「実は梨紗子よりも、友香子のほうが気が強い」が定説。本気のケンカに発展するため、練習でも一切スパーリングをしなくなったのは、世界一の姉にも負けたくない気の強さがあるからだ。

 内に秘めた闘志を大舞台で爆発させた川井友は、見事に女子レスリングの顔となった。