ピンポン外交ならぬマスク外交か。東京五輪卓球女子代表の石川佳純(27=全農)の発したひと言が、中国卓球ファンの間で大きな反響を呼んでいる。

 1日にカタールオープンへ向けて出発した羽田空港で取材を受けたが、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、どの競技団体も選手のマスク着用に神経質になる中で、石川はマスクなし。「家にあるマスクが少なくなってしまって」と説明したが、その理由の一つがTリーグに参戦した際、同僚の香港選手に譲ったことだ。このわずかなやりとりが中国のポータルサイトなどで記事として掲載されると「なんて優しいんだ。だから中国にもファンが多い」「大好き」「早くお嫁さんにいって、もっと幸せになってほしい」などと多くのコメントが寄せられた。

 新型コロナウイルスの発生源とされ感染拡大が続く中国では、日本以上にマスク着用が厳しく義務づけられている。同僚とはいえ、その大事なマスクを譲る行為は強烈なインパクトがあった。もともとの人気も高かっただけに、好感度は爆上がりだ。

 カタールオープンでは石川ら日本選手の戦いぶりにも中国から熱い視線が注がれる。中国チームは母国に戻ると国際試合に出場できなくなる恐れがあったため、2月上旬まで行われたドイツオープン後、一度も国に帰れずカタールで合宿を行ってきた。今大会は久々にトップ選手が国民に雄姿を見せる場。しかもライバル国の一つ、韓国はカタール政府から許可が下りず不参加に。他にも出場を取りやめる国、選手もおり、普段以上に日中対決になる様相が強い。

 今月に予定されていた世界選手権団体戦(韓国)も延期になり、東京五輪前の予行演習としても重要な意味を持つ。“優しいカスミちゃん”の快進撃となるか。