金メダリストが最後に見せた〝変化〟とは――。2016年リオ五輪競泳男子400メートル個人メドレー金メダルの萩野公介(27=ブリヂストン)が24日に引退を表明。「すべての方に支えられて、ここにいる僕はすごく幸せ。悔いはありません」と神妙に語った。

 幼少期から「天才スイマー」として数々の大会で優勝を飾ってきた。「勝つことが当たり前」だったものの、16年9月に右ヒジを手術後は「物理的にこういうふうに泳ぎたいと思っても泳げなくなった」という。完璧主義者のあまりドロ沼にはまり、19年春にはモチベーションの低下で約3か月間休養。周囲から「辞めてもいいよ」と声をかけられたが、東京五輪を目指して再スタートを切った。

 復帰後は弱さを隠すことをやめた。「見えを張るのは疲れた」(萩野)。実際、天才スイマーの思いがけない変化に、ある競泳関係者は「弱さを見せないようにしてきたけど、やっと〝人間らしさ〟を見せた」と話したほど。地獄を味わう中で泳ぐことの意義を見いだしたという。

 今夏の東京五輪では200メートル個人メドレーで6位入賞。3大会連続メダルこそ逃したものの「実力的には準決勝で落ちてもおかしくなかった。まさか決勝でも泳げるとは。心の底からうれしいと思ったのは幼少期のころ以来だった」。今後は大学院を受験予定の萩野がプールに別れを告げ、第2の人生を歩み出す。