「モンゴルの怪物」がついに覚醒した。大相撲名古屋場所千秋楽(24日、愛知県体育館)、幕内逸ノ城(29=湊)が幕内宇良(30=木瀬)を寄り切り、12勝3敗で初優勝を果たした。デビュー1年目から旋風を巻き起こす一方で、その後は持病の腰痛に苦しみ一時は十両まで転落。先場所はコロナに感染して全休を余儀なくされた。休場明けの今場所はライバルの存在に刺激を受けて快進撃。悲願の賜杯をたぐり寄せた。
逸ノ城は支度部屋で歓喜の瞬間を迎えた。本割で宇良を寄り切って3敗を死守。星で並んでいた横綱照ノ富士(30=伊勢ヶ浜)が結びで大関貴景勝(25=常盤山)に敗れ、悲願の初優勝が決まった。「優勝争いはしたことあるけど、優勝はできなかった。今まで味わったことがないので本当にうれしかった」
モンゴルの遊牧民出身。新入幕の2014年秋場所で「怪物旋風」を巻き起こした。体重約200キロの巨漢力士がザンバラ髪を振り乱しながら13勝をマーク。翌場所で新関脇に昇進し、一躍横綱大関候補に名乗りを上げた。しかし、その後は腰痛に苦しみ一時は十両に転落。幕内復帰後も三役に定着できず、5月の夏場所は新型コロナウイルスに感染して全休する不運もあった。
こうした中、埼玉・川口市議会議員で湊部屋後援会の稲川和成副会長は、先月中旬に開かれた激励会で逸ノ城の決意を感じ取っていたという。
「彼はもともと口数が少ない力士なんだけど、聞かれるとしっかり思いを口にする。特に春場所で若隆景が優勝したでしょう。それが相当、刺激になったと言っていたね。悔しいというか、先を越されたというか。自分もやってやろうと思ったら(先場所は)休場になったからね」(稲川氏)
逸ノ城が平幕で足踏みを続けているうちに、関脇若隆景(27=荒汐)が春場所で初優勝を達成。新たな大関候補の登場が発奮材料になっていたわけだ。
さらに、奇跡の復活を果たした〝盟友〟の存在も刺激になっている。今場所はモンゴルから同じ飛行機で来日した照ノ富士を5日目(14日)の直接対決で撃破。その横綱と最後まで優勝を争った。稲川氏は「照ノ富士が一度、大関から序二段まで落ちて、はい上がって横綱になった姿を見ているからね。本人が十両に落ちたことを〝同郷の復活劇〟に重ねて、それで火がついたんだろう」と指摘した。
今回の初優勝で、次の秋場所(9月11日初日、東京・両国国技館)は三役への返り咲きが確実となった。その逸ノ城は来場所へ向けて「どの地位でも今回のことをきっかけにしてやっていきたい。しっかり目の前の一番に集中していきたいです」。今度こそ、大関挑戦の扉を自らの手で開くつもりだ。












