大相撲初場所が9日に東京・両国国技館で初日を迎えた。角界が新たな年へ踏み出す中、現役力士による不祥事が土俵に暗い影を落としている。昨年12月に木瀬部屋所属の幕内英乃海と新十両の紫雷が埼玉県内の違法賭博店に出入りしていたことが発覚した。2人は初場所を休場して謹慎中。日本相撲協会のコンプライアンス委員会による調査を経て、早ければ初場所後の理事会で正式な処分が決まる見通しだ。

 角界内には「引退勧告」や「懲戒解雇」などの厳罰を求める声がある一方で〝廃業〟は免れるとの観測もある。ある関係者は「(英乃海と紫雷は)おそらくクビにまではならないとも言われている。協会から最初に事情を聴かれた時に、間髪を入れずに事実だと認めていたそうだ。朝乃山の時のことが頭にあったのでは」との見方を示した。

 昨年には大関だった朝乃山が新型コロナウイルスのガイドライン(不要不急の外出禁止)に違反。朝乃山は当初、相撲協会に対してウソの報告をしたことが問題視され、6場所出場停止の重い処分が下された。今回の両力士は素直に過ちを認めたことから〝情状酌量〟の余地があるとの見立てだ。ただ、仮に引退を回避できたとしても、世間が納得するかは別問題だ。

 朝乃山は虚偽報告や大関としての責任があったにせよ、あくまで協会内のルールに違反したレベル。賭博はれっきとした違法行為だけに、協会が毅然とした対応を示さなければ「大甘処分」との批判は避けられない。少なくとも一般企業であれば即刻解雇でもおかしくはないケースだ。英乃海と紫雷の他にも複数の力士が賭博に関与していたとの情報もある中、最終的に騒動はどこへ着地するのか。協会の対応に注目が集まる。