大相撲の横綱白鵬(34=宮城野)をめぐる「品格問題」が迷走中だ。白鵬は昨年11月の九州場所で43回目の優勝を果たした一方で、横綱審議委員会は立ち合いの荒っぽい張り手やヒジ打ちに近いカチ上げを「見苦しい」と問題視。日本相撲協会に対して指導を要請した。ただ、白鵬にルール違反の行為はなく、相撲協会は静観する構え。横審も“処分”を下すことには及び腰になっている。

 初場所(12日初日、東京・両国国技館)を控えた6日には、横審による稽古総見が国技館で行われた。横審は11月場所後の会合で白鵬が見せた荒っぽい立ち合いに「見苦しい」と苦言を呈し、相撲協会が指導を行うように要請。白鵬は横審の主張に対して「禁じ手ではない」と真っ向から反論した。その意味で今回の総見は両者にとって因縁の顔合わせでもあった。

 その白鵬は新小結大栄翔(26=追手風)を指名し12戦全勝と力の差を見せつけた。さらに「何が悪い」と言わんばかりに張り手やカチ上げを連発。稽古後は「(大栄翔の指名は)先場所で唯一負けた相手だったので。いろいろ試しました。厳しい攻め? そうかな」と涼しい表情を浮かべた。

 この日の稽古では白鵬の張り手やカチ上げは本場所に比べて控えめだったことは確か。横審の矢野弘典委員長(79=産業雇用安定センター会長)も「(荒っぽい立ち合いは)それらしいのが1番あったけど。見た感じではまともにやっている」と特に問題視はしなかった。一方で、初場所の白鵬の取り口については「ちゃんと見ていきたい」と引き続き注視していく構え。「白鵬=乱暴」の見方は崩していない。

 ただ、横審と相撲協会の間には“温度差”がある。芝田山広報部長(57=元横綱大乃国)は「白鵬は反則をしているわけでも何でもない。協会からは何も言えない。協会とは別に、横審からお伝えいただくしかない」との見解だ。横審の内規では「横綱としての体面を汚す場合」には出席委員の3分の2以上の決議により本人に「注意」などを行う権限を有している。横審が本気で白鵬の行動を改めさせたいと考えるのなら、協会を通す必要はないということだ。

 ところが…矢野委員長は白鵬本人に「注意」などを与える可能性については及び腰。本紙の直撃に対して「横審から注意? そういうことはない。協会がやること」と大きくトーンダウンした。今回の問題も結局のところ、「おとがめなし」で終わる公算が大きい。

 取り口の是非は別にして、白鵬の隙を攻め切れない相手のふがいなさが目立つことも確か。現状を打破する若手力士が出てこない限り、2020年も大横綱の時代が続くことになりそうだ。