開幕を4日に迎えた北京五輪の主役は、フィギュアスケート男子の羽生結弦(27=ANA)だ。五輪3連覇と人類初のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)成功に挑むが、その裏では「偽サイン被害」に直面している。競技本番を前に高まる人気に便乗し、すでにネットオークションでは羽生の直筆サインに見せかけた偽物の出品が急増中。仮に偉業を達成すれば、今以上に偽サインが大量発生することは確実だ。そこでサイン鑑定の専門家を緊急取材。羽生の実直な人間性につけこんだ〝悪質な手口〟も明らかになった。
4日の開会式には姿を見せなかったものの、今大会は羽生の話題で一色。3連覇達成なら94年ぶりの快挙となるだけでなく、成功すれば人類初となるクワッドアクセルへの挑戦も世界中から大きな注目を集めている。
そんな中、羽生の人気に便乗する悪質な詐欺行為が横行している。現在、複数のオークションサイトで偽物と見られる羽生のサインが出品されており、競技本番が近づくにつれて増加。その手口はかなり悪質で、素人には真偽の見分けが全くつかない。そこで「直筆サインを確実な資産に」のスローガンを掲げる筆跡鑑定会社「シードスターズ」の松本昭憲代表に現状を聞いた。
「ネットオークションは偽サインであふれ返っています。今、最も多いのはエンゼルスの大谷翔平投手ですが、羽生選手はこれからピークになると思います。現時点でも偽物がかなり出回っていますね」
実は2018年の平昌五輪後も羽生は偽サインの被害にあっていたが、この4年の間で国民栄誉賞も受賞。いまや世界的スーパースターとなった羽生を利用し、1枚につき7~8万円の荒稼ぎをする者もいるようだ。
こうした〝詐欺師〟たちはネット上で本人のサインを見つけ、見よう見まねで猛練習。複数のIDを作り、通報されて凍結されたら別のIDから何度も出品するという。羽生クラスであれば少なくとも2万円以上が相場で「2000~3000円で売られていたら偽物の可能性が高い」(松本氏)というが、実際には勘違いして取引してしまう人が後を絶たない。
また、羽生のサインにはアスリートの中でも特にターゲットにされやすい特徴があるという。「例えばイチローさんのように円が多く一筆で書ける形はまねしづらい。書き慣れた本人以外はスピード感を出せず、線がよれるからです。でも、羽生選手は複数のパーツに分かれ、何度もペン先を上げて書く形なので、1画ずつゆっくりと見ながらまねできるんです」(松本氏)
サインの形状を逆手に取られて格好のエジキとなっているというのだ。さらに、そこには羽生の人間性も関係しているというから驚く。「急いでいる時に書く〝ラッシュサイン〟というのがありますが、羽生選手は性格的にササッと書くことはなく、一つひとつ丁寧にサインします。だからまねされやすいんです」(同)。羽生のファンを大切にする姿勢にまでつけ込むとは、まさに悪質極まりない。
3連覇とクワッドアクセル成功の偉業を達成すれば、新たにひともうけしようとたくらむ者が増えてもおかしくはない。そもそも羽生のサインは他のアスリートに比べて絶対数が少なく、希少価値が高い。「サインは選手の価値を表すもの」(松本氏)というように偽物が大量に市場に出回れば、本物まで疑われて価値が低下する〝2次被害〟も起こり得るという。
羽生本人にとっても、決して看過できない偽物の実態。ファンは疑わしいものには手を出さないなどの〝防衛策〟を講じる必要がありそうだ。












