【フィギュアスケート全日本選手権・回顧録2】(2018年12月20~24日、大阪・東和薬品RACTABドーム)
会場は異様なムードに包まれていた。2014年ソチ五輪を最後に引退した高橋大輔が電撃復帰――。その一報はフィギュア界に衝撃を与え、ファンは熱狂した。
前年は解説者として全日本の会場にいた。目の前で後輩スケーターが躍動し、喝采を送るファンを見て気持ちが抑え切れなくなった。再び氷上に立つことを決意し、復帰戦の近畿選手権3位、西日本選手権で優勝を飾り、5年ぶりに全日本の舞台に帰ってきた。「世界でいろんな試合に出たけど、やっぱり全日本の緊張感は独特。心地いいですね」。空前の〝大ちゃんフィーバー第2章〟が幕を開けた。
特設売店では大ちゃんグッズが飛ぶように売れた。スタンドではカラフルな応援タオルを持つ観客であふれ、公式練習から黄色い声援。五輪2連覇の羽生結弦は欠場、シニアデビューでグランプリ(GP)ファイナルを制した16歳の紀平梨花が快進撃を続けていたが、主役は完全に高橋だった。
ブランクを埋められるのか。そんな心配をよそに、ショートプログラム(SP)はノーミスでまとめた。10年世界選手権V、12年グランプリ(GP)ファイナルVという実績はダテではない。平昌五輪銀メダルの宇野昌磨に次ぐSP2位発進を決め、目標に掲げた「フリーで最終グループ(6人)に入る」をクリアした。「プレッシャーに打ち勝つ」と悲愴感を漂わせて戦う宇野に対し、高橋は「自分のために滑り、楽しむ」。両者のコントラストもまた味わい深かった。
フリーでは宇野がさらに点差を離し、合計289・10点で3連覇を達成。高橋は4回転を封印しながら合計239・62点で2位に入った。復帰後としては大健闘だったが、フリー終了後にもう一つ、驚きが待っていた。日本スケート連盟に打診された翌年3月の世界選手権代表入りを辞退したのだ。通常、大会後に世界選手権代表選手の記者会見があるが、高橋は「辞退の理由を説明したい」と申し出て単独で緊急会見を開いた。いつものように柔和に、そして淡々と思いを語った。
「行きたい気持ちやヤマヤマですが、世界で戦う覚悟が持ち切れなかったのが大きな理由。(中略)日本のスケートが盛り上がっていくためには、若い選手が舞台を経験する必要性がある。冷静に考えて僕じゃない」
後輩への配慮――。周囲の関係者からは「英断」の声が漏れた。
それにしても高橋大輔という男はファンを飽きさせない。あの全日本から3年、今度はアイスダンスで北京五輪出場を狙い、全日本に出場する姿を誰が想像しただろうか。彼がスケーターであり続ける限り、見る者の楽しみは尽きない。












