東京五輪を前に正体の見えない大敵に混乱が広がっている。中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染拡大で「五輪中止」というニセ情報まで流れる騒ぎとなったが、組織委員会の森喜朗会長(82)は「無責任なデマ」と一刀両断。「東京大会の中止や延期は検討されていないことを改めてはっきり申し上げたい」と強調した。

 スポーツ庁と内閣官房の大会推進本部事務局は競技団体向けの「相談窓口」を13日付で設置。各団体の情報共有を図るべく政府、日本オリンピック委員会(JOC)、日本パラリンピック委員会(JPC)、東京都、大会組織委、関係自治体の担当者計30人の推進チームを発足し、本格的に新型コロナ対策に乗り出すこととなった。

 とはいえ現場の動揺は広がるばかり。第1回政府・競技団体間連絡会議(13日)で橋本聖子五輪相(55)は「スピーディーな適切な対応をさせていただく。関係者が一丸となり、対応したい」と述べたが、参加者の表情は冴えない。ある団体関係者は「やっつけで発足した感がある。質問しても『厚労省に確認を…』と雲をつかむような回答。不安は拭えない」と語り、他の出席者も「現時点でどんなウイルスなのか誰も分からない。今どうこうって言われても…」と戸惑いの声も。また配布資料には6日付の情報が記されており「意味あるのか」と苦言を呈す関係者もいた。

 現在、複数の五輪競技団体が中国での大会や合宿を中止。このまま感染拡大が続くと、森会長の言葉に反して「延期」や「開催地変更」の議論が持ち上がる可能性も否定できない。橋本五輪相はSNSによる不確実な情報に振り回されないよう念を押したというが…。夢舞台へ向けて選手や関係者は「信じて、待つ」以外に方法はない。