昨年6月に東京・池袋で危険ドラッグを吸って車を暴走させ7人を死傷させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われていた名倉佳司被告(38)の公判が20日、東京地裁で開かれ、検察側は懲役10年を求刑した。

 事故により中国人女性が死亡。事故の凄惨さだけでなく、よだれを垂らす名倉被告のラリッた姿が社会に大きなインパクトを残し、危険ドラッグ撲滅の機運を高めるきっかけになっていた。

 コワモテ風だった名倉被告だが、この日はオールバックにした髪を後頭部で結び、白いワイシャツを着て、神妙な表情。「私の浅はかな行動で被害を与え、まことにすいません。深く反省し、心よりおわび申し上げます」と小声で話した。

 弁護士は「店で“売れ筋ランキングナンバーワン”のハーブを勧められ、初めて使用した。一口二口で意識に変調を起こすとは思わなかった」と、犯意はなかったと主張。さらに「被害者や(事故で壊れた物の)所有者とは示談が成立した。被告はハーブやマリフアナを吸ったことがあるが、周囲からは温厚で優しく愛される人物と評価されている」と情状酌量を求めた。

 しかし、検察は懲役10年を求刑した。名倉被告を危険ドラッグの常習者と指摘し、示談についても、「これは保険会社の努力だ」と考慮に値しないとバッサリ。「同様の事故を予防する見地から厳しい処罰を与えるべき。また、常習性と犯意の否認から再犯の恐れが多い」と厳しく糾弾した。

 名倉被告が吸っていた危険ドラッグの成分は合成カンナビノイドという物質。大麻の40~50倍も強力で、幻聴や幻覚を引き起こすといわれている。たとえ危険ドラッグから足を洗ったとしても被害者の命は帰ってこない。