安倍晋三元首相が奈良市で街頭演説中に銃撃され死亡した事件で、逮捕された元海上自衛隊員の無職山上徹也容疑者(41)が、安倍氏の背後から手製の銃を持って近づき、約7メートルの場所で1発目を、さらに近づいて約5メートルの位置から2発目を発射していたことが11日、分かった。致命傷になったとみられる2発目までに約3秒あったといい、当時の警備の在り方が問われそうだ。また、山上容疑者の心理について専門家が分析した。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は11日、東京都内で記者会見を開き、山上容疑者の母親が信者だと明らかにした。容疑者は母親が多額の寄付によって家庭が崩壊したとして恨みを募らせたとされ、奈良県警の調べに「(旧統一教会を日本に)招き入れたのが岸信介元首相。だから(孫の)安倍氏を殺した」と供述している。旧統一教会側は「自分たちへの恨みから元首相の殺害に至るというのは、大きな距離があって困惑している」との見解を示した。
山上容疑者は「昨年春ごろから銃を作り始めた。当初は教祖を狙っていた」などと供述しているという。1年以上前から事件を計画していた可能性がある。
危険極まりない人物が野放しになり、安倍氏を銃撃したわけだが、銃大国の米国では危険人物をあぶり出すシステムがあるという。国際社会病理学者で米国凶悪犯罪に詳しい桐蔭横浜大学の阿部憲仁教授はこう語る。
「連続殺人の捜査で有名なFBIのBAU(行動分析捜査班)には、銃の購入など『暴力化進行過程』に基づいて、銃乱射事件を起こしそうな人物の危険度評価を行う部署BAU2も存在しています」
凶悪犯罪を起こす者は、何らかの兆候を示していることが多い。
「警察の警備ミスばかりに注意を注ぐのではなく、大量殺人計画の可能性のある人物を通報するホットラインを設けることの方が、こうした犯行を未然に防ぐ上ではより重要と言えます。なぜなら彼らの多くは犯行前に身近な者に必ずと言ってよいほどその兆候を示すのですから」と阿部氏は指摘する。
では、山上容疑者とはどんな人物だったのか。
「山上容疑者の場合、母親の顔色をうかがうことを最優先するスタイルが染みついてしまい、社会で生きていくために必要な『自我』を確立できなかったのです。そのため、他者からのちょっとした摩擦で傷付くようになります。自分は悪くないのに、社会の人たちが平気で自己主張(攻撃)を繰り返す中、怒りが蓄積し、弱い自分を心理的に支えるために、ひそかに武器や暴力的な人間やグループ、過激な思想にはまり込んでしまったのです」
実際、山上容疑者は自家製の銃を手に入れてしまった。
「山上容疑者は自分に向かう母親の愛情を奪った宗教団体代表を狙うつもりであったが、その実行が難しいので、その団体と近しい関係にあったと勘違いし、安倍氏をターゲットにしたと話しているようです。そのように攻撃対象を安易にすり替えたのは、山上容疑者の最大の動機が自分の中に蓄積された怒りの排出にあり、それに値するターゲットを探していたからでしょう」(同)
つまり、“復讐”など特定の対象に固執していたわけではないということだ。
阿部氏は「そういった意味では『誰でもいいから殺したかった』とする無差別殺人犯と心理的には大きく変わらないと言うこともできます」と指摘している。











