「プーチンを木星に飛ばそう! ロケット製造のために2・99ドルを寄付してください」…こんなツイートが先日、英語でなされた。どこかの冗談好きの言葉ならスルーしていいが、ツイート主はなんと、ウクライナ第1副首相兼デジタル転換相のミハイロ・フョードロフ氏(31)だ。そして、デジタル転換省が制作した寄付サイトでは、プーチン大統領がロケットで打ち上げられたシーンがアップされている。本気なのか…。

 ロシアのプーチン大統領は16日、経済対策を話し合う政府のオンライン会議で「ウクライナがロシアを攻撃する欧米の前線基地になることは容認しない」と述べ、ウクライナでの軍事作戦は目的達成まで続けると強調した。国営テレビが中継した。プーチン氏は、ウクライナに武器を提供して流血を続けさせていると欧米側を非難した。

 一方、日米欧の先進7カ国(G7)などは同日、ロシアへの経済制裁や不正送金の監視などを話し合う閣僚級の作業部会の初会合を開いた。オンラインで各国の財務と司法の担当閣僚が参加。鈴木俊一財務相は会合後に記者会見し、ロシアへの経済制裁の実効性を確保するため参加国で協力していく方向で一致したことを明らかにした。

 人権保護などを目的とする国際機関、欧州評議会(フランス・ストラスブール)の閣僚委員会は同日、ウクライナに侵攻したロシアの除名を決定し、即時に発効した。欧州で人権や民主主義、法の支配をつかさどる機関からの排除で、ロシアの孤立が一層浮き彫りとなった。

 そんな中、フョードロフ副首相が先日ツイートした内容は「みんなプーチンには死んでほしいと思っている。ウクライナ人と世界中の人に、またとない機会を用意しました」と始まり、「プーチンを木星に飛ばそう!」と続く。ウクライナ政府要人自ら、軍事侵攻を続ける敵国大統領は“世界の嫌われ者”だとし、「木星に送ろう!」と呼びかけたのだ。

 そして、デジタル転換省が設立した寄付サイト「センド・プーチン・トゥー・ジュピター(プーチンを木星に飛ばそう)」では、漫画風のロケットに乗せられたプーチン氏と、「プーチンを木星へ飛ばそう。血まみれの独裁者を遠く遠くに送るロケットを造るために寄付してください」「地球の1億人の善良な市民は、一つの悪を木星に送ることができます」との文字が記されていた。なぜ木星かというと「ガスの巨大惑星であり、太陽系で最大の惑星である」という理由だという。

 また、同省のホームページでも「プーチンを木星に送りましょう。1人2・99ドルを寄付してください」と記している。

 しかし、誰かがプーチン氏を生け捕りにしたとして、どうやって宇宙に飛ばすのか。宇宙開発企業「スペースX」を創業したイーロン・マスク氏が適任だろう。

 マスク氏は14日、「私はここで、プーチンとの一騎打ちに挑む。ウクライナを懸けて」とツイート。さらにロシア政府の公式ツイッターに向け「この戦いに同意しますか?」とロシア語で挑発した。

 フョードロフ氏も同日、この“決闘申し込みツイート”を引用し、「きっとイーロン・マスクはプーチンを木星送りにできる」とつぶやいている。

 スペースX社は昨年、民間人を乗せた宇宙船「クルードラゴン」を打ち上げ、無事、帰還に成功している。もしプーチン氏をロケットに乗せたとして、片道チケットだろうが…。

 地球と木星の距離は近い時で約6億キロ、遠い時で約9億キロ。ロケットで行くとすると2~5年ほどかかるとされている。そんな遠大な計画の実現性はどうだろう。

 実はフョードロフ氏もデジタル転換省も「寄付サイトのアカウントは国営企業DIIAに属しており、調達された資金は、実際には軍と壊されたインフラの復旧に向けられる」との趣旨を明かしている。

 つまり、敵国大統領を笑える形でネタにし、コケにした上で、集めたお金でロシア軍と戦うつもりなのだ。

 このユーモアと毒を織り交ぜた寄付呼びかけ作戦には、16日時点で200万ドル以上が集まっている。最終的に1億ドルの調達を目指しているという。