恐喝罪で懲役6年の実刑判決を受け、2014年6月から服役していた国内最大の指定暴力団「山口組」のナンバー2、高山清司若頭(72)が刑期を終え18日朝、東京・府中刑務所を出所した。関係者が出迎え、移動の新幹線駅まで警察が厳重警戒する物々しさ。15年8月の山口組分裂は高山若頭の“不在”の間に起きており、キーマンと言われる高山若頭の出所で抗争は激化するのか、それとも…。「神戸山口組」、第3の勢力「任侠山口組」を含めた分裂抗争は新たな局面を迎えそうだ。

 高山若頭は山口組の司忍(本名・篠田建市)六代目組長と同じ2次団体「弘道会」(名古屋市)の出身で、司組長が服役していた時は若頭としてらつ腕を振るった。「山口組、ヤクザ社会における高山若頭の影響力は絶大なものがあった。有力組織が離脱して神戸山口組を結成したのも、高山若頭不在のタイミングを狙ったと言われている。それくらい大きな力を持っていたということ」と暴力団に詳しい関係者。

 高山若頭の出所を前にして、山口組と神戸山口組の抗争は激化している。4月に神戸山口組の有力組織「山健組」の幹部が弘道会系組員に刺された。8月には弘道会の神戸事務所が銃撃され、傘下の組員が重傷を負った。今月10日には山健組本部事務所付近で、弘道会系組員が2人を射殺する事件が起きたばかりだ。8月、今月の事件とも報復とみられており、連鎖は断ち切れていない。

 これに業を煮やしたのが警察だ。山健組本部事務所の銃撃事件を受けて、神戸市の山口組総本部と神戸山口組本部を含む4府県の拠点事務所約20か所について、暴力団対策法に基づく使用制限の仮命令を出した。「警察当局は怒り心頭。年内にも山口組、神戸山口組を『特定抗争指定暴力団』に指定する可能性が高い」(捜査関係者)

 特定抗争指定暴力団に指定されると、組事務所など関係各所への立ち入りを制限されるほか、組員が5人以上集まっただけで逮捕できるという厳しいものだ。警察当局はそれだけ“圧力”を強めており、両団体とも難しいかじ取りを迫られている。

 このような難しい状況で高山若頭は“社会復帰”することになる。「『これまで以上に強硬路線を取るのでは?』といわれているが…警察の動きもあるため、どう“采配”を振るのか。その一方で出身母体の弘道会傘下団体が離脱するかも、などという情報も飛び交っており、先行きはまったく読めない。高山若頭の動きが、今後の局面を大きく左右することは間違いない」(前出暴力団に詳しい関係者)

 一部ではいずれ山口組七代目組長を襲名するとまで噂されている高山若頭の復帰により、新たな地殻変動が起きることだけは間違いない。

【緊迫ドキュメント】早朝5時50分過ぎ、高山若頭は府中刑務所を出所した。出入り口付近は、ワイシャツの下に着こんだ防弾・防刃ベストで体のふくらんだ警察官や、そのスジと分かる鋭い目つきの男たちであふれ返り、物々しい雰囲気だ。

 高山若頭を乗せた車はJR品川駅へ。駅には100人を超える警察官が配備され、報道関係者に声をかけてカバンの中身に容赦なく手を突っ込んだ。組員と警察官が至近距離でにらみ合う異常な空間を、通学の小学生がキョトンとした顔で通り過ぎていく。

 高山若頭が駅に到着したのは6時45分。首にはコルセットが巻かれ、つえをついてゆっくりと1人で歩いていた。新幹線の改札を通り抜け、7時17分発博多行きの「のぞみ9号」をホームのベンチに座って待つ。10人弱の組関係者が囲み、その周りを20人以上の警察官が囲んだ。

 レンズを向けるカメラマンらに「撮るな!」と怒声を浴びせたのは警察官だ。一方の高山若頭は側近と話し、ときに口元をほころばせるシーンも。グリーン車は1両貸し切り状態。隣の車両には何も知らぬ一般客がいる。ホームではピリピリした雰囲気が続いたが、高山若頭が乗り込んだ新幹線が品川駅を後にすると、仕事を終えたコワモテ警察官らの顔にも安堵の笑みが浮かんだ。その後、高山若頭は名古屋駅で下車した。